カンヌ2014:U2ボノ&Apple ジョナサン・アイブ対談最終セミナー

あっという間に、カンヌ最終日。そして、最終セミナー。
そして、最終セミナーにふさわしいカード。アップル上級副社長 Sir Jonathan Ive氏とU2 BONO氏の対談。モデレーターは、VICEマガジンのCEO, Shane Smith氏だ。

このセミナー、まず、人がすごい。Sarah Jessica Parkerやう、Sir John Patrickなどのセレブリティーが参加してたセミナーもすべて含め、これまで出たどのセミナーよりも人が多かった。私は、1時間半前から、別のセミナーに参加して、そのまま席を陣取った。

DSC_0123まず、前列すべてにカメラマン達が陣取り、前が見えない。最前列の人はちょっとかわいそうだった。右がBONO、中央がShane Smith、左がSir Jonathan Ive。BONOはとりあえず、グラサンをかけている。ロックスター感満載。

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今日の対談のメインテーマはREDプロジェクトについてだ。REDプロジェクトは、アップルとの関連が一番有名だが、2006年にU2のボーカルであるBONO氏によって立ち上げられたプロジェクトだ。目的は、アフリカのエイズを撲滅すること。アップル以外にも、上のスライドにある企業と様々な形でコラボを行い、プロダクトの売り上げから、エイズ撲滅のために寄付を行う、というものだ。アップルだと、赤いipodとかipadが有名だ。

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モデレーターのShane Smith氏が話を振りながら、Bono氏とJonathan Ive氏から話を引き出していくのだが、BONO氏はすごいですね。自分のプロジェクトに本当に情熱を持っているのがこちらにも伝わってるように語るし、ちょいちょい、ジョークを挟んでくれるのも、気が利いていて格好いい。

昔、Steve Jobs氏とBONO氏がREDプロジェクトでの打ち合わせをしているとき、BONO氏から「アップルロゴにかっこ()をつけさせてくれ」と申し入れたときに、けんもほろろに断れたらしいのだが、※Redプロダクトは、かっこ()がコンセプトを表す大事なキービジュアル。

“So when Steve told me that nothing interferes with the logo, I just thought, well, cram up your phone in the ass…and that was before the iPhone by the way guys!”
(スティーブに、アップルのロゴの周りは絶対に不可侵だ、と言われたとき、こいつのケツにこいつの電話をぶっ刺してやろうかと思ったよね・・・あ、ちなみに、これ、iPhoneの前の話ね!)

会場大受け。とにかく話が面白い。芸人の話聞いてるみたいだった。

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ちなみに、さらにすごいなと思ったのが、この上の写真。BONO氏の上にREDプロダクトのiPadがあるのだが、いきなりケースを外して一言。

「みなさん、これちょっと見てくれる?REDのロゴがね、iPadのケースの後ろにあって全然見えないの!」

「ジョニー、どうよ、これ?直そうよ!ね!」

といきなり、Jonathan Iveに直談判。(むしろ軽くディスってる)。が、そこはJonathan Iveも大人。ちょっと憮然としながらも、

“Modesty is the Apple way…”
(控えめであることは、アップルのやり方なんだよ・・・)
とぼそっと一言。

かっこいい。

そして、会の後半。ここでもさらにびっくりした。いきなり、通路席に赤いバケツみたいなのを持っている人達が現れた。「あれ、寄付金でも募るかな?」と思ったら、これに名刺を入れて、「俺たちと一緒にREDプロダクトをつくろう!」とBONO氏が言い出した。

さらに、「あと、なんか今いいアイデアでたら、発言してさ、俺に教えてよ!」といいだして、「会場総ブレスト大会」/「私、これやります!大会」になった。

中南米の銀行の担当者が「RED銀行口座」をつくることをその場で確約したり、なんか、ネットのドメイン扱ってる人が、世界で一つしか無い .hiv というドメインがあるらしく(?)、それをBONO氏に寄付するとか言い出したり。新手の商法みたいな事になってた。(私も一つ思いついたことがあるにはあったが、あまりにびっくりして戸惑って発言できなかった・・・)

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もう、会場総立ち。音楽のライブでもないのに、ライブ会場みたいになってた。すごかった。

カリスマはこうやって、人を動かして、世界を変えていくんですね。

 

・・・と、そんなわけで、私の初カンヌはこれで終わりました。事例もたくさん見たし、セミナーもたくさん聞きました。いろいろな国の人達と知り合いになり、話し込みました。そして、自分がその会場の中で、なにもコントリビュートできることがないのがただただ、悔しかったです。仕事をするのではなく、「素晴らしい」仕事をする。真摯に研究を怠らず、ゴールを達成するための正しいアプローチを心がけていれば、あるいは、達成可能な事かもしれません。仕事を不在にしてしまい、たくさんの人に迷惑をかけてしまっておりますが、日本に帰国して頑張ります。(カンヌに来てから、何回がんばるという言葉を口にしたか、、、)

カンヌ2014:電通セミナー

博報堂セミナーについて、書いたので電通のセミナーについても書くことにする。

今年の電通のセミナーのタイトルは、”Augmented Human”だ。
イントロで、映像が流れるのだがトリッピーで格好いい。紹介できないのが残念だ。

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本日のメインスピーカーは、佐々木康晴氏。(僕の上司だ。)

開始後早々の発言。
「今年はパフュームこないんだ、ごめんね(笑)」
と軽くジョークをかまし笑いをとり、
「そして、今日はアドバタイジングの話はしません。」
と。

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よく、ARだとか、言われるが、まずはAugmentの定義のおさらいから。「何かを付随して付け足す」みたいな意味だが、もっとシンプルに言うと、このスライドに書いてあるとおり、何かをよりすごくしたり、キャパシティーを高めたりするということだ。

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そして、
今日のセミナーのテーマである”Augment Human”だが、Augmentするのは、Realityではなく、Humanである。テクノロジーの新しい使い方。
ここ最近の電通がつくったものを一通りご紹介。
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NEKOMIMI.
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Living Wallet. 財布の可愛い動きがリスナーに受けてた。

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次に、佐々木さんから同じく本日のプレゼンターである、東京大学大学院情報学環の暦本教授にバトンパス。最近の研究と共に、Augmented Humanの考え方に触れてもらう。

スライドの写真が無くて恐縮なのだが、人が道具を使うときを例にだして説明をしてくれていた。たとえば、マウス。OSというものに対して、マウスがインターフェースとなり、OS上の「ポインター」として、自分の動きをAugmentしてくれる。

他の道具でも同じだ。たとえば、包丁。包丁を握る「柄」の部分がインターフェースとなり、刃が「切る」、という行為をAugmentし、可能にしてくれる。

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すこし、考え方を拡張して、Jack Inという別の観点からAugmentを考えてみる。Jack Inとは、マトリックスとかであった、機械の中に没入する、という状態ですね。この後の例で出ていたのが、ドローンにカメラを装着して、その映像を人間にOculusなどで送る、というもの。そうすると、第三者視点で、ジョギングができる。

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サッカーなんかも、より面白い視点でプレーできたり、それを他に共有できたりするようになる。

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トピックはまたすこし移り、今度はスポーツの話に。

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スポーツをAugmentするとして、そのときにカテゴリーが3つほどに分かれる。トレーイング、観戦、そしてプレーするときだ。

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たとえば、トレーニングするとき。Swimoidとよばれる、スライドの下にうつってるマシーンだが、こいつは、泳いでいる人の下を「伴泳」し、鏡のようにその人のスイミングフォームを見せてくれる。泳いでいる人も、コーチも、実はなかなかフォームについて把握できないので、このように、別の視点から見れるようにすることで(例えば、コーチが地上からこのSwimoidが把握している映像にJack Inすることで)、トレーニングという領域をすこしAugmentする事ができる。

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次は、スポーツを観戦するときのお話。良く、GoProなどで自分目線で撮った映像がアップされていたりする。

DSC_0027これは、すなわち、スポーツをしている人に観客がJack Inするということともいえる。そう捉えると、もっと、いろいろな面白い可能性が広がってくる。

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たとえば、このヘッドギアのようなマシン(スライド左側)。装着している人の視点を360度確保できるという優れもの。Oculusなどを使えば(スライド右側)、その人の視野を「再体験」できるというわけだ。

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ここで、教授が実際にデモで見せてくれた。

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たとえば、それを大車輪をしている体操選手に付けてみる。そうすると、体操選手の演技を、体操選手側の視点から見れる。ぐるぐる回って、気持ち悪くなるかもしれないので、プログラム的に処理をして、「視点を固定して」演技を見る事も出来る。

このあたりから、聴衆から感嘆の声が漏れはじめる。そして、隣の人から、「え、すごい、どういうこと?」という声が上がってので、自分が知った風な顔して「いや、だからね、Augmentされてるわけ、わかる?」と解説をする。

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そして、次にプレーするときの話。紹介されたのは、HoverBallというもの。ドローンが中に内蔵されたボールだ。

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そうすると、何が実現できるかというと、たとえば、大人と子どもがキャッチボールして遊んでいる時を考えると、子どもがキャッチするときだけ、キャッチできるようにスピード落とす、ということも可能になる。

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他にも、ボールに「あり得ない動き」 をさせたりする事ができて面白い。

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実際にデモを見せて頂く。投げたら帰ってきた。フォースの使い手みたいだった。

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スポーツをエキスパートのものだけにするのではなく、本当の意味で、「みんなのもの」にできる可能性があるものなのだ。

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ここで、Dentsu Lab Tokyoのご紹介。そこでのプロジェクトについての話になる。

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そして、満を持して、太田選手の登壇!プレゼンに熱気がこもっていて、すばらしかった。ジェスチャーとか、相当練習したんだと思う。その徹底的な姿勢に感動した。

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太田選手からは、2020東京オリンピック招致の時に話題になっていた、フェンシングをセンシング技術を使って可視化する話があった。

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端から見て、フェンシングは、いったい何をやっていて、そもそも、どっちがかったのかすら、よく分からん・・・ということで、それを様々なセンシング技術を駆使し、みんなにも分かるようにすれば、楽しいよね、という話。

実際に、太田選手の「突き」を実演してもらい、その場で剣先をトラッキングする、というデモも見せてもらった。

このあたりでも、リスナーはみんなびっくりしてるようだった。

そして、映像だったので、残せなかったが、国立競技場プロジェクトの紹介映像も最後に流れた。

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最後に、佐々木さんによるシメ。機能だけではない。技術だけではない。エモーションを追求することで、より大きな課題を解決していく。
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プレゼンター3人。

プレゼンが終わったときは、会場から割れんばかりの拍手。博報堂セミナーのエントリーでも書いたが、なかなか他のエージェンシーにはまねできないような日本の仕事のやり方や、強みが明解に伝わったのではないかと思う。(隣にいた人に話を聞いたら、「日本すごいわね、私たちのエージェンシーじゃ、絶対できないわ」といわれた。)トピックの内容も具体例やデモがふんだんに用いられたので、すごく良かった。

プレゼンが終わった後、周りの全然しらない人達に、どや顔で「あれ、僕の上司なんすよ」と触れ回った。別に、自分自身は何もしてなかったけど、自分の会社が誇らしかった。が、また同時に、特に良い仕事をしているわけではないので、悔しくもある。来年こそは、なにかプレゼンできる立場になりたいと強く感じた。

がんばろう。

3月気になったトピック:”HUVr”

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ここ最近、とりわけ3月の間で自分的にメモしたものや気になった事例をリスト化してまとめてみる。ソーシャル上でいろいろなネタが回ってくるが、すぐに消費されてしまい、振り返ることが無くなってしまうので、書き留めておくのは大事だと思う。日記のようなものでもあるのかも知れない。

【HUVr】
まずはこのサイトで、動画を見ていただこう。

バックトゥーザーフューチャーファンなら落涙ものである。
クリストファーロイドの最初のナレーションから私は泣いた。
Nikeが2015年にパワーレース付きの靴を発売する、という事で話題になっていたが、もう片方の未来がついにここに来たと。

まぁ、全部嘘なんだけどね。

そう、これ、すべて嘘なのである。(冷静に考えればそりゃそうだと思うが)
あたかも、どこかのスタートアップが作ったかのような見せ方になっているが、実際に地面から浮くスケボーなどあるはずが無い。

が、面白いのは、嘘だともちろんわかっていても、どっちにせよ話題になることだ。

で、嘘なので、炎上するのだが、ちゃっかり動画をまたリリースして、クリストファーロイドがネタバラしをしつつ、お詫びしている。

なんというか、お詫びするもエンターテインメントになっている。
クリストファーロイドに謝られちゃ、もう誰も何も言えないし、なぜか一瞬でもだまされそうになった事が、心地よい経験として残っている。

Onlab Growth Hack Conference2013に行って来たので、そのレポート

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ちょっと、若干曖昧なところもあるが、後学の為に、自分が見聞きした事で、メモした事を余さず書き記す。

Open Network Labが主催する、「グロースハックカンファレンス」に行って来た。

シリコンバレー・日本で最先端のグロースハッカーが集結!Onlab [Growth] Hackers Conference 2013

ここ最近、語られる事が多くなって来た「グロースハック」について、国内外からスピーカーを招き、自らの経験をもとにそれぞれがグロースとは何か語る。

スピーカーはこの5人。
・Sean Ellis氏
・Gustaf Alstromer氏
・古川 健介氏
・Ilya Lichtenstein氏
・松本 龍祐氏

今回のポストでは、そのうちの二人を見ていくとしよう。

スピーカー一人目:
Sean Ellis -Qualaroo社CEO-

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Qualaroo社CEO。Qualarooとは、ウェブサイトへの訪問者の動向を分析し、彼らの行動に影響を与えることで顧客との繋がりを強化するマーケティングツールである。Qualaroo以前には、Sean氏はLogMelnとUproarにてローンチからナスダックへのIPOまでを行い、Dropbox、Lookout、Xobniを市場へ送り出すことを指示した。また、Eventbrite、Socialcast、Webs、 World Golf Tour、Wordpress.com、Songkickといったサービスの成長を加速させた。

ちなみに、Growthhackという言葉を作った人。

「グロースハック」という言葉を作った本人がわざわざ来てくれるんだから、千人力だ。

後ほど、直接お話しして、いろいろ相談したりしたが、フランクですごく良い方だった。

じつは、ちょっとだけ冒頭聞き逃してしまったのだが、印象に残ったのが、下記スライドで説明していた概念。

グロースハックの段階

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そもそも、「グロースハック」とは、どの段階で語られるべきものか?このスライドをみるとわかるが、”Growth Transition ” “Scale Growth” の前に”Product/Market Fit”という土台の所がある。

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“Product/Market Fit”とは、Sean曰く、そのプロダクトが特定の人にとって「無くてはならないものになっている」状態の事を指す。
この”Product/Market Fit”が到達している段階でこそ、グロースは意味があるとSean Ellis氏は説く。

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では、Product/Market Fit(PFM)はどのようにして図るか?
ユーザーに直接、「このプロダクトがもう二度と使えなくなるとしたら、どう思いますか?」と聞いてみるのである。
この質問に対して、ターゲットグループが40%であれば、次のステージ(つまりグロースへの第一歩)に行くサインだと言う訳だ。
※ターゲットグループの40%と言うところに注意。すべてのユーザーである必要は無い。サービスのターゲットにしたいユーザーで良い。この段階に到達する前に、グロースを目指すのは、もったいないし、危険でさえある。※二人目のスピーカーである、Gusutaf Alstromer氏は、Gmailの開発者の”Hundred Happy Users”(100人の幸福なユーザー)という言葉を紹介しており、これがまさにPMFに到達する事と同義だと思う。

“Network Effect Exception”
また、”Network Effect Exception”という話もあった。
「グロース」の対象が、すべてがすべて、顧客基盤の拡大、と言う訳ではないと言う事だ。

Network Effectがかかるプロダクトとそうじゃないプロダクトがある。

Network Effectがかかるプロダクト。:ユーザーが増えるたびにプロダクトの価値が高まる。Facebook, Skype, Ebayなどが好例。

そうじゃないプロダクト: ユーザー数の増減がプロダクトの本質的価値にあまり影響を与えない。Apple iPad, Evernoteなどがそうである。

ネットワークエフェクトがかからないプロダクトに関しては、違う観点からのグロース、を考えるべき。つまり、ユーザーエクスペリエンスの向上がグロースの主目的になるだろう。

グロースの為の社内の文化はいかにして、作るか?
Sean Ellis氏が繰り返し主張していたのは、数字。グロースという素地をチームの中に作るには、まず「データを見る」という文化から始める事。そして、グロースハックは特定の人だけのものでなく、チームすべての人のものだということも強調していた。Sean Ellis氏の後のスピーカーでもあったGustaf Alstronomer氏も言っていたが、Airbnbのグロースチームはエンジニア、デザイナーのチームで構成される。今回の講演の中ででた話ではないが、Sean Ellis氏のブログを読むと、グロースのチーム内に、手を動かせる人間の存在(例えばエンジニア)は重要である、と語っていた。グロースは、誰かがやっているから、自分には関係ない、ではなくチームの中に空気のように存在すべきで、すべてのチーム員はデータ・オリエンテッドであるべきなのだ。

また、当然ながらデータを漫然と眺めているだけでも不十分だ。データがそろった後は、「好奇心」から始まる。なぜ、この事象が起こっているのか?原因はなんだろうか?十分なデータと十分な好奇心がクリエーティビティを生む。

また、顧客にたくさん話を聞く事も、グロースを行う上での有用性の高さを挙げていた。例えば、Sean Ellis氏曰く、Airbnbはローンチする前に、クレイグリストのユーザーに繰り返し話を聞き、マーケットは既に存在している事の自信を客観的な裏づけと共に深めていった。余談だが、Airbnbの立ち上げ当初、Craigslistでポストをして顧客獲得をやりまくっていたが、Craigslis側が”airbnb.com”の文字列を含む投稿をできなくしたらしい…。マーケットプレイスを使い倒すと言う意味では、前述のクリエーティビティにあふれる手法でもあると思う。

ブランド認知よりも、ブランド経験を優先せよ。
グロースをする上で、ブランド経験をしたかどうか?と言うことにも重きを置いていた。先ほど、「ユーザーに話をたくさん話を聞く」と書いたが、これはブランド体験をした人(すくなくとも2回以上)に対して行う方がいいらしい。考えてみるとたしかにその通りで、グロースをしたいのであれば、プロダクトについてよくわかっているユーザー、使っているユーザーから意見を聞くべきで、そうなるとブランドを体験した人、と言う事になる。PMFに到達するという話もそうだし、100人の幸福なユーザーを作る、という話もこことつながる。満足度の高いユーザーからの意見は金言なのである。(KPIもユーザーにしてほしい体験、を念頭に置き、設計すべきである。)

スピーカー二人目:

お次はこの方。

Gustaf Alstromer Airbnb社 Product Manager, Growth

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Airbnbのグロースにおけるプロダクトマネージャー。Airbnb以前には、2007年よりモバイルのウェブコミュニティ及び100万人以上のユーザーを持つインスタントメッセージサービスを行うHeysanを共同創設者し、CEO、製品開発を専門としていた。HeysanはY Combinatorのプログラムへも参加している。その後、eBuddyというインスタントメッセージングサービスにてプロダクトマネージャー、Voxerというトランシーバーアプリケーションにおいて、グロースチームの統括を行った。

今回のグロースハックカンファレンスには残念ながら、フィジカルには参加できず、Skype経由での参加となった。講演後、Twitterで質問したら、快く答えてくれた。いい兄ちゃんだった。

ちなみに、Voxerを開発しているときは、Twitterとオフィスをシェアしていたらしい。

講演の中から、拾って来た発言を列挙します。(ほんとはプレゼン資料貰えれば良いのだが、貰えなかった…。)

(以下、講演メモ)
—————-
・週ごとのグロースのレートの違いは、後々、大きな違いをもたらす。例えば、週ごとの成長率が3つあったとして、それぞれ、1% 3% 10%賭した場合、10週間後、信じられない量での違いを見る事になるだろう。(借金が複利で増えていく事を考えると、これはよくわかる。)

・よって、グロースレートを把握する事が重要。グロースレートと時間の経過。

・では、グロースレートの改善とは?それは、「ユーザーがした経験の数」×「経験ごとの改善」としてシンプルに表せられる。

・プロダクトかグロースか?どちらに集中すべきか。

・「多くの会社はグロースをすべきだと思い込みがちであるが、実際は、プロダクトの改善の方が重要だったりする場合もある。」

・では、いつグロースに集中すべきか?

・そのプロダクトは、ユーザーがたくさんんいる事によって向上するのかどうか?例えばAirbnb, Voxer, Twitter, Facebookなどはそうである。だが、Evernoteなどのプロダクトだとそれは違う。シングルユーザーのユースケースが想定されるからである。Evernoteのようなプロダクトであれば、プロダクトの向上にリソースを割くべきである。

・グロースに集中したいのであれば、マーケットで「受け入れられている」ことが前提となる。※Ellis氏のPMFと同じである。

・Airbnbのグロースチームは11人いる。それぞれ、デザイナーやエンジニアである。

・どのような人間をグロースチームとすべきか?
   ー好奇心が旺盛で、データとユーザーについて、好奇心を追求できる人。
   ーすべての立脚点をデータによって示せる人。
   ー人間の心理をよく理解している人。

・ Airbnbチームが使っているグロース用ツール。
ーMixpanel (A/Bテスト用)
    ーOptimizely (A/Bテスト用)
ーGoogle Analytics
    ーYoz.io (モバイルのネイティブアプリ用)
    ー特製ダッシュボード(内製)

・ここから、Voxerの事例にうつる。Voxerは無線のようなコミュニケーションツールとして機能する。グロースの考え方はVoxerにどのように寄与したか?

・もともと、「コミュニケーションツール」と言うカテゴリーから行くと、VoxerはHeytell, Tiki, blip.me,や Talkboxなどのグロースレートが大変高い競合が既にいた。

・その中で、Voxerが伸びる可能性があったのは、SMSでのInvite送信であったり、友人のマッチングする際に置ける。ユーザーのアクティベーションのフェーズだった。

・Voxerには、ユーザーがアプリをダウンロードし、立ち上げた際に、いくつかのフィールドを使って友人関係のマッチングを行い、アクティベーションを行う。Facebook ID/ 電話番号 / Emailの情報であったり、FB ソーシャルグラフ / アドレス帳における友人関係の情報だ。

・プロセスはこうだ。
①Email、電話番号、Facebook IDを介した、自動マッチング作業。
②そこから抽出した友人に対してのプッシュ通知。
③アクティベーション → 最初のユーザー体験へとつながる。
ここでの数字のすべてを、mix panelで把握した。

・どの画面を何パーセントがタップしたか。何パーセントが送信ボタンを押したか。その数値を見ながら、「バイラル係数」を算出。

・グロースの為に、すべてのステップを数値化した。(すべての数値を見ろ、と言う事ではない。)

・このVoxerが「全米1ユーザー数が伸びているアプリ」になるまでの流れが興味深いと思う。

・それまで、iPhone版しかなかったアプリだが、2011/11/1にAndroid版をリリース。

・2011/11/29 1日250,000+Userが増える様になる。

・2012/12/6に全米1ユーザー数が伸びているアプリとしてメディアに取り上げられる。

・Android版出しただけでそんなユーザー数が伸びるのか?

・Androidだと、ユーザーパーミッションの取り方がiPhoneとは違うので、かなり別のユーザーエクスペリエンスを提供できる。

・それが結果として、iPhone版ユーザーにも波及し、驚異的なグロースをたたき出す結果になった。

・メディアに取り上げられるなど、アーンドメディアの効果はありつつも、基本的には広告に関して、$0の費用投下だった。すべて、オーガニックでバイラルに伸びた数字だった。

・100人のプロダクトを愛してやまない人がいない限り、大規模な人集めにお金を投下すべきではないと思う。
—————-
(講演メモ終わり)

今回のエントリーはとりあえず、ここまで。

(あぁ、でもホントブログ書くのって苦手…。気が向いたら、もう少し推敲します。)

SXSW 2013 レポート [Mar. 9]

二日目。前日の反省を生かし、「ホテルから会場へ到着すること」を最優先に考える。手段をえらばず、まわりの人間とコミュニケーションをとり、移動方法を模索した結果、ボストンからのインタラクティブプロデューサーが既にタクシーを手配しているとの事だったので、これに同乗させてもらい、無事会場入り。一日目とは打ってかわり、この日はフルで活動できた日となった。書く内容も盛りだくさんだ。以下は二日目に参加したセッションの内容。

<Conversation with Danny Boyle(ダニー・ボイルとの対話)>

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セッションの冒頭には、ダニー・ボイル監督の最新作”Trance”のトレイラー上映も行われた。

「トレインスポッティング」「127時間」「スラムドッグ・ミリオネア」で有名なダニー・ボイル監督(Danny Boyle)をNew York Timesのコラムニスト,デービッド・カー(David Carr)が迎え、インタビューを行った。

ダニー・ボイル氏プロフィール…
1956年イギリス、マンチェスター生まれ。スコットランドを舞台にした『シャロウ・グレイヴ』(95)、『トレイン・スポッティング』(96)でユースカルチャーの鼓動を捉え、英映画界を覚醒、全世界的衝撃を与える。その後、ハリウッド映画『普通じゃない』『ザ・ビーチ』を監督。イギリスに戻り『28日後…』『ミリオンズ』で、独自の映像感覚が復活。『サンシャイン2057』では、真田広之を起用。

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※中央がダニー・ボイル監督。左がデービッド・カー。右は、ダニー・ボイルとよく組む音楽監督。

デービッド・カー氏プロフィール…
アメリカのジャーナリスト。ミネソタ州ミネアポリス出身。New York Timesのメディア/カルチャー欄執筆を担当。アンドリュー・ロッシ監督のドキュメンタリー映画”Page One: Inside the New York Times”にて頻繁に登場する。

特にテーマがあった訳ではないが、いくつか気になった会話や発言があったので、抜き出してみる。

「ユアン・マクレガーはただの人だった」…
映画”Shallow Grave”で登場するユアン・マクレガー。当時はまだまだ全然無名の俳優だったにも関わらず、オーディションで一目見たときから、「あ、こいつはいけるな」と思ったらしい。ダニー・ボイルの審美眼が優れているのか、ユアン・マクレガーが輝いているのかどちらかわからないけれども、才能が才能を見つけるプロセスというのはいつもミステリアスで同時にすばらしいと思う。

「やってはいけないことをやってしまうところに、うまく行く勝算がある。(バックアップは必要だけど)」…
“Shallow Grave”を撮影しているとき、ワンカットでつなげる手法が常套とされる場面において、意図的にカットを切りまくる事で違う効果が表現できる事を「発見」。データサイエンティストののネイト・シルバー(Nate Silver)も言っていたけど、誰もやった事がない事にトライする事が何かしらの発見や成功につながる第一歩なんだなとこの発言を振り返って、しみじみと感じた。

「It was not my cup of tea」…
2012ロンドンオリンピック開会式の芸術監督だったダニー・ボイル。その時の仕事を評価され、なんとナイト称号の授与を打診されるも、”It was not my cup of tea!”(私が貰うようなものではないね!)と言って断ってしまったらしい。あんまり評価を気にしないところがかっこいい。サー・ボイルも十分かっこいいと思うけれども。

<How Twitter Has Changed How We Watch TV(Twitterはテレビ試聴をいかに変えたか)>
今更ツイッター?と思われるかもしれないが、ツイッターとテレビの「今だからこそ」見えてくる関係性についてのセッション。大変示唆に富んだ内容だった。詳細はこちらから

<Brainstorming Technology First(テクノロジーをまず最初にブレストする)>
R/GAによる、新しいブレストの手法!すばらしいセッションだった。詳細はこちらから

<お昼休み:Agency Meetup デジタルクリエーティブの為の就職フェア>
おい、また就職フェアかよ!と突っ込みを受けそうだが、別に転職したい訳じゃなくて、アメリカの労働市場をよりよく理解する上で、アメリカの会社の採用担当の人と実際に話をしてみたいと思って…ごにょごにょ…まぁ、とにかくせっかくの機会だったので話をしにいってみました!上に挙げたR/GAも担当者が来ていたので、どういう人材を採ろうとしているのか、その「感じ」も見たかった。

<Keynote Elon Mask x Chris Anderson(イーロン・マスク×クリス・アンダーソン対談)>

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ペイパルを創業し、次に電気自動車のテスラモータースを創業し、そしてさらには宇宙を目指し火星への有人着陸を目指すロケット製造企業、spaceXを創業するという、おそらく「アイロン・マン」に出てくるトニー・スタークの現実版みたいなトンデモナイ人がメイカームーブメント提唱者のクリス・アンダーソンと対談するという、超ビッグなキーノートセッション!

と、ここまで書いておきながら、恥ずかしいことに、私はこの対談に参加するまでイーロン・マスクの事をこれまで知らなかった…。こういうセッションに参加できるとSXSWに来てよかったと本当に思う。

イーロン・マスク氏プロフィール…
南アフリカ共和国・プレトリア出身のアメリカの起業家。SpaceX社の共同設立者およびCEOである。PayPal社の前身であるX.com社を1999年に設立した人物でもある。すごすぎて、思わず「私はあなたの爪の垢ほどの価値もございません」「生まれてきてごめんなさい、毎日無為に生きていてごめんなさい」というフレーズが口をついて出そうになる。

クリス・アンダーソン氏プロフィール…
ご存知「メーカー・ムーブメント」の提唱者。元ワイヤード編集長、現在は3D Robotics社CEO。

イーロン・マスクは現在、SpaceX社のCEOとして、火星への有人飛行を民間企業として(冗談抜きで)実現しようとしている。途方もない。対談の冒頭に、クリス・アンダーソンから「テキサスに来たのはこのSXSWだけじゃないですよね?」と話をふられ、「SXSW以外にも、テキサスの政治家と会談をもち、ロケット基地を作れないかどうか探りに来たのです。」と答えるイーロン・マスク。「赤道に近いところがベストロケーション」らしい。普通の社長じゃない。「2016年ぐらいには実際に建設したい」らしい。

そして、次にこんなビデオを見せてくれた。SXSWで世界初公開するビデオらしい。

なんと、ロケットが発射され、空中にしばらくそのまま滞空し、そのまま戻ってくるという今までに見た事ない離れ業をやってのけるのだ!この「駐車」ならぬ、「駐ロケット」動画に会場は大興奮!なぜこのようなロケットの開発を進めているのか?という問いに対して、イーロンは「ロケットの再利用性の重要性」について指摘する。コスト的にも、倫理的にも、ロケットを使い捨てにしない、というのはロジックが成立、というわけけだ。この概念が進むと、いずれは宇宙エレベーターに行き着くのだろう。それまで、ロケットというのは「使い捨て」というのが常識だったと思うが、その常識を覆すべく、未来から現在を逆算し、着実に歩を進める姿勢はすばらしいと思う。「成功の度に、少しずつ、遠かった目標に近づきたいんだ」とイーロン。

また、「なぜSpaceX社を創業したのか?火星への有人飛行ができると思った理由は?」というクリスからの質問に対しては、「NASAが未だに誰も火星に人を送り込めてない事にがっかりしたんです!火星に人類が行く、という事に人々がもっとエキサイトすることで、予算も増えるはずです。できるかできないかより、やるかやらないかと言う問題だと思ったのです。」とのこと。その為には、手段を選ぶ事なく、ロシアから弾道ミサイルを購入しようとした事もあったらしい…。(弾道ミサイルを買うって、どういう交渉ルートで買うのか全く想像もつかないけど…)

次は、イーロンの私生活について。これだけのスーパーマンっぷりを発揮しながらも、実は子供が5人もいるらしい。子育てをしながらメールを読んで返信したり、かなりのマルチタスカーのようだ。ただ、他のイーロン・マスクの記事にも書いてあったが、相当なハードワーカーらしい。

<Muppets to Mastery: UX Principles from Jim Henson(マペットから熟達へ:ジム・ヘンソンに学ぶUXの原理)>

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ラス・アンガー・(Russ Unger)氏プロフィール…

ちなみに、ここにプレゼン資料がアップされている。

UXデザイナーの語るUX/UI論。普通のUXトークと違うのは、セサミストリートでおなじみ「マペット」の制作者ジム・ヘンソンの仕事を引き合いに出して、UX/UI論を展開するところだ。ジム・ヘンソンは、マペット制作を通じ、ハックやプロトタイピング、ビジュアルシンキングを実践した。

この話を聞いていて思うのは、「ハック」だとか、「リーン」だとか、「アジャイル」という現在のUX/UI開発の主流を占める手法論が、ごくごく当たり前の事で、パソコンはおろか、インターネットというものが発明される以前から当たり前のように実践されて来ていた、という事実だ。ラスのセッションはマペット制作者のジム・ヘンソンが主題だったが、彼だけが特別だった訳ではないと思う。きっと、もの作りにたずさわる人の間では、言語化されていないにせよ、通底していたメンタリティーだったのではとこの講義を聴いて思った。

<What’s so funny about innovation(イノベーションの何が面白いって?)>

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もともとコメディアンだったバラトゥンデ・サーストン(Baratunde Thurston)が「笑い」の要素を紐解き、イノベーションと何が似ているか?についてポール・ヴァレリオ(Paul Velrio)と語り合うセッションだった。ポール・ヴァレリオがまじめ係、バラトゥンデ・サーストンがおどけ係という役割分担で話が進んだ。

ポール・ヴァレリオ氏プロフィール…
サンフランシスコにあるデザインコンサルティング会社Methodにて、ストラテジーを担当。複数のブランドをクライアントとして担当。

バラトゥンデ・サーストン氏プロフィール…
コメディアンでありつつも、ビジネスパーソン。Cultivated Witの設立者およびCEO。MITメディアラボフェローでもある。声はでかいが、話し方が知的なあんちゃん。

以下はセッション中に取ったメモ:


01:オーディエンスを知れ。そして、彼らに耳を傾けない。
「笑い」において、観客を知る事は重要。だが、観客に何が面白いか?を聞きすぎるのはあまり助けにならない。それよりかは、まず「自分」というフィルターを通してみて面白いかどうか?を判断しなければならない。その後は観客に合わせて多少のアジャストをする。観客が何を知っているかを知っている事が重要だ。

02:データはインサイトの代用にはならない。
データのリサーチをたくさんする事でインサイトは生まれない。

03:常に新鮮であれ。
「笑い」においても、同じギャグを何回も言い続けるのは飽きてしまう。時々何か新しいものを入れこまないと行けない。温故知新という手法もある。

04:自分なりの視点を持とう。
レイトナイトショーを見ると、どの司会者も同じ時事問題を扱っているときがあるが、それぞれ微妙に違う。自分の視点があるからだ。自分自身の考えを公にする事のできるツールがたくさんある今、自分の視座と言うものが自分自身をユニークたらしめる唯一のものだ。よって、自分自身の事を良く知るのが大事。

05:みんなに受けようとは思わない事。
笑いにおいても、市場においても、100%のシェアというものは存在しない。

これで、とりあえず二日目は終了。講義を聴きまくり、新しい価値観にたくさん触れた。テンションがあがる。

SXSW 2013 レポート: “How Twitter Has Changed How We Watch TV”(Twitterはテレビ試聴をいかに変えたか) [Mar. 9]

写真 2013-03-14 13.31.34
SXSW二日目、一番最初のセッション。SXSW公式紹介ページはここから。本当は二日目で参加したセッションをまとめてレポート書こうと思ったが、書いていたらずいぶんと長くなってしまったので、R/GAセッションのレポートと同じく、こちらも独立したポストに分ける事にした。

日本ではなじみが多いテレビとPCの「ながら試聴」。それと近い話だと思うが、ソーシャルメディアとテレビコンテンツの相性についてがメイントピック。講師はジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)。ソーシャルメディア関連の会社を自分で起こしたり、博士号を関連する分野で取得しているなど、ソーシャルメディアに関しての専門家だ。

自分はたまたまラッキーだったが、あとで人から聞くとセッションに入れない人がいっぱいいて、会場の出口に急遽同時中継のテレビが設置され、それに聞き入る人だかりができる、という事態になったようだ…。

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会場の外に出来上がる人だかり(by他のSXSW参加者写真)。SXSWでは、人気のあるセッションは最低でも30分前に到着するのが鉄則!(逆に入れなかったときのがっかり感は凄まじい。)

ジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)氏プロフィール…
Union Metricsの共同設立者およびCOO(Chief Customer Officer)。Organizational Communication and TechnologyでのPhDを取得。

R/GAセッションと同じく、すばらしい事にスライドがここから閲覧可能になっている。

セッション中から気になった発言や考え方をピックアップした。

「テレビコンテンツの配信設計とソーシャルメディアの関係性」
ジェン氏が言うには、コンテンツの配信の仕方によってテレビ番組がO.A.されているときに巻き起こるtweetのパターンが変わるらしい。

【”On-going Series”(継続型)】
いわゆる普通のテレビコンテンツ(ドラマ)の配信の仕方。毎週決まった時間に配信。
このタイプで一番のツイート量を稼ぐのは”Pretty Little Liars”。自分は見た事ないが、大人気ドラマシリーズらしい。

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ワンシーンで最大30,000ツイート叩きだすらしい。

このパターンで、大きなツイートを稼ぎだす番組の他には…

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“The Walking Dead” であったり、

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“American Idol”や、

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“X Factor”などの、オーディション番組がなかなか良いツイート量を稼ぎだすらしい。O.A.されている時に起こっていることが視聴者にとってツイートする重要なネタになる。

【”On-going Series Finale”(継続フィナーレ型)】
先ほどのパターンの派生形。継続型のツイートは、フィナーレ(最終回)を迎えるときに、ツイート量が頂点に達する。逆説的だが、最終回に達する前でも、ツイート量を観測する事で、そのコンテンツが成功しているかどうかある程度わかってしまう。

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例えば、先ほど挙げた “Pretty Little Liars”と”Terra Nova”(スピルバーグ製作のドラマだったが、コケて製作中止に…)だが、どちらも全国規模でのO.A.にもかかわらず、”Pretty Little Liars”が 2時間で90,000ツイートを生み出すのに対し、”Terra Nova”は同じツイート量に到達するまで2週間はかかるとの事…。受けるコンテンツとそうじゃないコンテンツの差が如実に出てしまうのだ。視聴率なんかより、遥かにリアルな数字である。

【”One-time Events”(一発イベント型)】
スーパーボウルなどのイベントがこれに当たる。イベント当日にツイート量の爆発的な伸びが観測される。最近あったオレオのスーパーボル広告ツイートはこのタイプのコンテンツの時間的特性をよく生かした施策と言えるだろう。「結果が予測できない」というのがツイートを生む大きなモチベーションとなる。

【”Streaming All-at-Once”(一度にすべて配信型)】
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“House of Cards”というドラマが引き合いに出されていた。2シーズン分のコンテンツ制作に約100〜200万ドルをかけたこのドラマ。配信権を獲得したのは既存のテレビ局ではなく、なんとNetflix。ネット経由でのコンテンツを配信する事になった。テレビと違って、配信の方法に縛られる事がないのが利点だが、このコンテンツに関しては、隔週という形ではなくとある金曜日に2シーズン分「まとめて」アップロードする事にした。その後のツイート量を調べてみると、これまでのパターンとは明らかに違い、配信直後から伸びたツイートが緩やかに減少していく、という傾向を見せた。

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先ほど挙げた4つのツイートパターンの変化まとめ。

コンテンツ一つとっても、配信の仕方でソーシャルでの広がり方が全く違うのだ。

「ツイッターを介したインタラクティブなコンテンツの作り方」
コンテンツの配信の仕方だけでなく、作り方にも留意すべき点はたくさんある。

【ユーザーとともにコンテンツ作る】
たとえばゴールデングローブ賞の中継。ゴールデングローブ賞オフィシャルのツイッターアカウントがあるのだが、O.A.中に、「授賞式会場に来ているセレブリティでだれの写真を撮ってきてほしいか?」というアンケートを実施。

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結果、アデルが一番投票され、実際にその様子を撮影し、アップ。実際にイベントが起きている時間をユーザーと共有している共時性を利用、コンテンツを作り出す好例。

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こんな興味深い事例も。Archerというコメディーアニメがあるのだが、

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キャラクターにそれぞれツイッターアカウントが存在する。ユーザーがキャラに絡むときちんと返事が来る。面白いのは、アニメの声優が実際にアカウントの運営をしているところだ。コンテンツが好きなツイッターユーザーならきっと絡むだろう。その絡みがまたツイッター上で広がり、新たなコンテンツ視聴者を獲得する。

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アニメつながりで言うと、シンプソンズなどで有名な作者が作ってるアニメでFuturamaというのがあるのだが、アニメ中に、こんな画面が出てきて、「この後起こるシーンはどんなものか?」という問いが出てくる。たいてい、選択肢のいくつかはストーリーのつながりと関係のある選択肢だが、もう一つの選択肢はストーリーの展開と全く関係のない事(「キャラが奇声をあげる」とか)になっており、ほぼその最後の選択肢が選ばれ、コンテンツが進行する。

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“Hawaii Five-O”というドラマは、エンディングの前に、「どのようなエンディングがよいか」をファンに募集をかけた。結果、東海岸と西海岸では違うエンディングとなったため、わざわざ「二つ別のエンディング」を製作したほどだ。

2年前、AUDIがスーパーボウルコマーシャルで最初にハッシュタグを使ったそうだが、今ではどのスポンサーもそうしている。テレビ離れが叫ばれるアメリカでも、同じような悩みを抱えつつも、ドラスティックに番組作りを変えてみたり、ソーシャルのトレンドを積極的に受け入れようとしている姿勢に感心した。

SXSW 2013 レポート: R/GAセッション “Brainstorming Technology First” [Mar. 9]

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SXSW2013 二日目、R/GAによる超人気セッション!開始40分以上前に到着したにも関わらず、キャパがいっぱいで、運営側から入場を断られてしまうも、なんとかお願いし倒して入れてもらった。このセッションはすごく面白かったので、独立したポストでこのブログでシェアしたいと思う。

Nike+ Fuel Band などを開発、いわゆるトラディショナルな広告ではなく、デジタルの最先鋒を走る旗手であるR/GA。今回のセッションのタイトルは “Brainstorming Technology First”(まず最初にテクノロジーをブレストする)となっており、広告業界なじみの「これまでのブレスト」ではなくテクノロジーを生かす為のブレストの手法論を主に紹介するようになっていた。講師はWill Turnage。Technology & Invention部門のヴァイスプレジデントだ。

そして、すばらしい事に、ここに当日のプレゼン資料があがっているので、見てもらうと良い。

プレゼン資料をかいつまみながら、解説していければと思う。

——

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まず最初に、R/GAの直近の仕事からの紹介だった。

スライド05
Duck Dynasty。

スライド07
Raybanのアプリ。

スライド06
Miyamo。

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プロジェクトでいつも気をつけてるのは、それぞれが “Legible + Interesting” つまり、きちんと「理解」されかつ同時に「面白い」仕事になるようにする事。

スライド10
いわゆる「既存のブレスト」のやり方は、きちんとしたブリーフを書いてから、「じゃあ、みんなで思いつくまま考えよう!」という感じが多いと思う。いっぱい考えて、考えて、いいアイデアを思いつくようにがんばる。

スライド13
普通は、「アイデア」を考えるフェーズが先行し、その後に「実行」についてできるかどうか考えるフェーズに移行する。そのときに初めて”Is this possible?”(このアイデアは実現可能か?)と言う質問をチーム内で検討する事になると思う。しかしながら、この問いの立て方には大きな間違いがある。

スライド14 
なぜなら「実行可能かどうか」という問いにはエクスペリエンスとしてどうか?という問いが含まれないからだ。写真にもある通り、実行は可能だが、エクスペリエンスとしてどうなんだと思ってしまう状態は往々にしてあり得る。(ここで会場爆笑に包まれる)

スライド16
ユーザーからすると、エグセキューションからアイデアに触れることになるので、エグセキューション自体がエクスペリエンスの導入になるのだ。

スライド17
アイデアから実行までを順番に行っていくとすると、実行段階でいろいろ揉んだりしているうちに、元のアイデアに含まれていた部分が失われて、「薄く」なることがよくある。

スライド18
そして、アイデアから実行までのプロセスを線的に踏むと、そもそも時間がかかりすぎてしまう。

スライド19
では、テクノロジーをきちんと活用する為に、ブレインストーミングはどうあるべきか?

スライド20
それは、アイデアを考えながらも、同時に実行についての検討プロセスが平行して進むようになるべきである。

スライド21
その為に重要なポイント。かならず、最初の目的に立ち戻る事だ。このアイデアで本当にワークしているかどうか?

スライド22
次は、制約を積極的に受け入れる事。何かを作るということは、ある程度の制約の中で行われる事が普通だ。

スライド23
そしてもう一つが練習をたくさんする事。テクノロジーを活用する為には、普段からテクノロジーに触れている必要がある。新しいAPIを試してみる、新しいガジェットをハックしてみる、など日頃からのトレーニングが欠かせない。

スライド24
ここからは実際にR/GAで活用している”TechFirst Brainstorming”の手法論の話になる。

スライド25
ブレストの事前準備。約1~2日をTechFirst Brief執筆に費やす。その際に、施策の目的/ストラテジーに合致するテクノロジーを一つ選ぶ事。それは、具体的でなければいけない。それはOSであったり、プラットフォームであったりと曖昧な選び方にはならない。具体的な機能や特徴でなければならない。

スライド26
その後、1時間を上限に、ブレストセッションを展開。まず5~8分をかけて、事前に書いたブリーフをもとに、ブレストの参加者それぞれ、「一人」で回答してもらう。このときに、アイデアを搾り取るように、短い時間で集中して行う。場合によってはこの5分のプロセスを2〜3回繰りかえしてもよい。その後、45分程度をかけてみんなで出し合ったアイデアを共有し、場合によってはアイデアを広げるようにする。

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実際にやってみた具体例を。一つ目は「仮定」メソッド。

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新しいiPadが発売され、大人が触ったときと、子供が触ったときと、赤ちゃんが触ったとき、それぞれの違いがきちんと認識されるような機能があったとする。この機能を使ってできそうなことを10個挙げてみよう。

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ブレストの結果がこちら。白板に書かれているをいくつか拾ってみると…。
・子供用のロック。ペアレンタルコントロール機能。
・Netflixアプリ用のフィルター
・ゲームの難易度を変更させる
・年齢検出

まぁ、これだけだとわかりづらいかもしれないが、いっぱい出てくる。

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もう一つの手法論。”Fill in the blanks”「空白を埋めてみよう」という方法。

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たとえば、コレ。トラックにインスタグラムフィルターがついていたとして、どんな写真を撮ったか?というお題形式で想像力を膨らませるもの。大喜利みたいな感じ。

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いろいろ試してみると、想像力を刺激される回答が出来上がってくる。

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次の手法は、”Magnetic Poetry”と呼ばれる手法。

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見ての通り、いろいろな言葉を組み合わせる事で、アイデアを出す、という手法だ。カテゴリーは”Descriptor”(修飾語)”Technolgy”(技術)の2パターン。

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例をとって、いくつか組み合わせてみる。”fanciful”(空想に富む) + “garbage”(ゴミ) + “tumblr”=「空想的なゴミがあつまるタンブラー」というのは一体どんなものだろうか?

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“bright” + “money” + “followers”だとどうだろうか?想像力が刺激されてこないだろうか?

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さきほどの”Magnetic Poetry”のアップグレード版。

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すこし項目が追加されている。 “Tone”(トーン) “Occasion”(状況)”Functionality”(機能)

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何かのアイデアにつながりそうな組み合わせをどんどんピックアップしていく。

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今度は、言葉の組み合わせではなく、APIの組み合わせでアイデアを作る手法。

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たとえば、”foursquare API” + “instagram API”という組み合わせで考えてみると…。

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それっぽいプロダクトの一丁出来上がり!アイデアを考える為の素地に十分なる。

スライド49
この手法をR/GAで実際に活用してでわかった事。

スライド50
それはブレストによって生まれるアイデアがより面白く、かつ実現可能なものがたくさん生まれたと言う事だ。

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さらには、時間を短縮した。

スライド52
そして、クリエーティブ作業をクリエーティブスタッフだけでなく、それ以外のスタッフにとってもアクセスしやすいものにする事ができた。

スライド53
ただ、この手法はかならずしも万能ではない。この手法を活用しても「あんまり俺には向かなかったみたい」と言う人もいる。従来通りのブレストに固執する人もいるかもしれない。そういう人たちに対して無理にこの方法論を強いる必要はない。

スライド54
この手法はツールの一つでしかなく、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、強力なツールである事は間違いない。

スライド55
ここからはちょっとしたTIPS。

スライド56
ブレストの前段階になるTechFirstブリーフは書き上げるのに時間がかかる。ブリーフの執筆には十分な時間を割く事。

スライド59
「このアイデアは実現可能か?」と問いをたてるのではなく、「このアイデアは良いUXで実現可能か?」という問いで繰り返しアイデアを自問自答する事が大切だ。

スライド60
そして、このブレストの際には、クリエーティブスタッフだけでなく、それ以外のスタッフにも入ってもらう事が重要だ。

——

WIRED CONFERENCE 2012@Roppongi Hillsに行ってきた

ワイヤード主催のカンファレンスに行ってきた。
クリス・アンダーソンさんのトークが大変面白かったので、レポート記事にしたい。

<Who is「クリス・アンダーソン」?>
US版ワイヤード編集長(つい最近、辞任する報道が出たけど)。日本では書籍が一番有名で、

『ロングテール -「売れない商品」を宝の山に変える新戦略-』
『フリー -〈無料〉からお金を生みだす新戦略-』

などのネット系や、広告関係の人には特に知られた著作を持つ。
最近発売された著書が、『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』
今日行ってきた講演は、このMakers Movementについて取り扱うもの、と言う訳だ。

カンファレンスのページにも、詳しいプロフィールがある。

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<WIRED CONFERENCE 2012基調講演内容要旨>

——-

クリス・アンダーソンさんの講演は、まず、スイスからの移民であったご自身の祖父の話から始まりました。彼は、仕事の傍ら、「発明」をする事に時間をかけていたそうです。彼のそのときの発明は、「スプリンクラー」。時計の技師がおおい、スイスらしく、そのスプリンクラーにタイマーをつけ、初めて特許を取ったのがクリス・アンダーソンの祖父でした。

「特許をとって、お金ももらえて、すばらしい話じゃないか!」と周りの人は思うかもしれませんが、発明者であるクリス・アンダーソンさんの祖父は「特許」と言う物に対して、良くは思っていなかったようです。彼は、「発明」という行為を通して、自分のアイデアを具現化し、マーケットに出す事に成功しましたが、自分が発明した物が自分の手から離れてしまう事をも意味していました。彼は発明者ではあっても、起業家ではなかったのです。そんな祖父から、クリス・アンダーソンさんは「ものづくり」のいろはを学びました。機械製図の基礎から、実際にそこで起こしたアイデアをプロトタイプに落とし込むまでなど。型から、エンジンを作った事もあったそうです。

時はながれ、現代。物作りはテックショップと呼ばれる、いわゆるファブラボのようなスペースで行われるものとなりました。この物作りの変遷の動きは、当時メインフレームと呼ばれ、アクセスがきわめて限定だったコンピューティングが、パーソナルコンピューターとして人々に広く普及していった流れとよく似ています。

クリス・アンダーソンさんは続けます。「これまでの10年は新しいソーシャルとイノベーションのモデルをウェブで試す事でした。これからの10年はそれを現実世界に広げる事です。」と。

まず最初に産業革命。それは、人が持つ「物理的な力」を例えば水力や電力を使って機械に変換する事を可能にしました。その結果、少ない人間が、膨大な量の製品を作り出す事を可能としました。しかしながら、それはそれまで散らばっていた人々の住まいを工場に集約させる事となりました。そして、その工場は資本家が所有していた物です。

そして、次の産業革命。プリンターという存在(パーソナルコンピュータではない)を考えてみると、プリンターを通じて、波及力は限定的ではある物の、「知識をパブリッシングする」というそれまでできなかった事ができるようになりました。さらに、ブログの登場を経て、知識を広める事ができるようになりました。プリンターとブログは、それぞれプロトタイプのツールであり、ディストリビューションのツールであったと言う訳です。

三つ目の産業革命。つまりこれからの時代。プリンターがプロトタイプのツールであったとするならば、これからは3Dプリンターがプロトタイプのツールとなるでしょう。それに対応する、ディストリビューションのツールは、クラウドマニュファクチャリングプラットフォームの存在があげられるでしょう。ウェブが広まっていったときとおなじ構造がここでもみられるのです。

クラウドマニュファクチャリングプラットフォームの一例…

<alibaba.com>
世界最大のB2Bインターネット貿易サイト。サプライヤーとバイヤーをつなぐ。
http://www.alibaba.com/

<trademanger>
上記のalibaba.comにて、サプライヤーと連絡を取り合うためのチャットツール。やり取りされるメッセージは自動的に翻訳される。
http://trademanager.alibaba.com/

アイデアをプロトタイプし、実際に製品として作るところまで、個人でできてしまうのです。でもその後は?そこで、kickstarterなどでクラウドファンディングを行うのです。

<kickstarter.com>
http://www.kickstarter.com
クリエイティブなプロジェクトのためのクラウドファウンディングサービス。予算はないけれども、魅力的なゲームや低予算映画のプロジェクトがあるユーザーが、他のユーザーから投資を受けることができるプラットフォームです。有名なのは、pebbleというプロジェクト。68,000人以上の支援者を集め、$10,266,845(!)という金額を集めています。

クラウドファンディングがすばらしいのは、お金を借りる必要がない事です。ユーザーからの支持をベースに資金が集まるので、市場調査もかねています。(お金が集まる=マーケットがほしがっている物である、という図式が成り立ちます)また、一番すばらしいのはユーザーからの支持を集める段階で、「コミュニティ」が出来上がるという点です。ユーザーは顧客ではなくなり、参加者となるのです。

クリス・アンダーソンさんの祖父が作ったタイマー付きスプリンクラーは今の時代だったらどうなるだろうか?そんな考えをもとに、クリス・アンダーソンさんが作ったスプリンクラーが、”OpenSprinkler” ネットにつながっており、外からでもスプリンクラーをコントロールすることも可能です。APIも公開されており、手順を経れば、だれでも自分で安価に作る事ができます。クリス・アンダーソンさん自身はスプリンクラーを作った事があるわけでももちろんなく、それでもネットで関係者の力を借り、1ヶ月ほどで作り上げる事ができました。しかも、これまであったスプリンクラーより良い物が。

そのときに使ったツールですが、Autodesk 123Dというソフトがあります。

インターフェース画面をみると、PrintだったりMakeというボタンがあります。考えてみるとすごい事で、印刷する、プロトタイプを作り上げる、というのは一昔前は専門領域で、場合によってはPhdがいるような領域でした。

クリス・アンダーソンさんの娘さんたちにこんな事があったそうです:彼女たちはドールハウスで遊ぶ事が多いのですが、もっと家具を集めたりして、おもちゃのバリエーションを増やしたいと思っていました。そこで、父親であるクリス・アンダーソンさんにおねだりをして、amazonで何かいいものは無いかどうか、いろいろ探してみるのですが、たくさんのメーカーが製品を出しており、そのどれもに規格が存在する訳でもなく、自分たちのニーズに合う物が無い事がわかったそうです。そこで、クリス・アンダーソンさんたちがとった方法とは、プロの家具デザイナーがオンラインで公開している家具のCADデータを入手、それを用いて自分たちのドールハウスで合うサイズに変更し、3Dプリンターで作り出し、自分たちが望む形に塗装してそれを使う事でした。確かに既製品とは品質では勝負できないかもしれませんが、彼女たちにとってはそれで十分であり、しかも自分たちのクリエイティビティーが発露できたと感じているのです。これまでの消費活動の代替にはなりませんが、オルタナティブとしては十分機能しうるのです。

(ちなみに、Autodeskの”123D catch“と言うツールを使えば、iPhoneで撮影した対象物が自動的にデジタルモデルに変換されるというさらにすごいアプリがあります。)

ビル・ジョイというコンピュータ技術者(サンマイクロシステムの初期メンバーの一人)によるこんな話があります。

すべての知識、そしてアイデアを現実にするためのインフラがすべてネットで探し出せるこの時代、世界の名だたる企業で働くのは「優秀な人」ではなく、企業が求めるクライテリア(いい大学を卒業している、言葉が話そうとしている、など)に合致する「安全な人」であると。企業が求めるタスクに対して、企業が雇用しているのは実は「最高のスタッフ」ではない、ということです。

では、最高のスタッフとはどこにいるのか?

クリス・アンダーソンさんは、3D Roboticsという会社を経営しています。もともとは、ご自身の子供がレゴとモーターを使っておもちゃを作ろうとしているのをみて、「これが空を飛んだら面白いかもな」と思い、趣味で作った空飛ぶラジコン(DIY Drones)を製品として売り出すために作った会社です。

クリス・アンダーソンさんがこの空飛ぶラジコンのプロトタイプを作ろうと思っている事をブログで呼びかけたところ、反応したのがメキシコに住んでいるJordii Muñozという人でした。

その後彼とクリス・アンダーソンさんは、アイデアを製品に落とすため、ラジコンのプロペラを稼働するために必要なモーターをalibaba.comで中国のサプライヤーに発注し(翻訳はtrademanagerで行われる)、モックアップを作り出しました。

数年前にほんの思いつきで始まったプロジェクトは、適切なコミュニティを作ることで、自ら関与したいと思える人を世界中からあつめ、実際の企業として事業化への道を歩んでいます。

このJordii Muñozという人物ですが、クリス・アンダーソンさんにコンタクトをとったときはほんのティーンエージャーにしかすぎず、大学教育を受けた訳じゃありません。いわゆる従来の基準でいうと、決してつながる事の無かった二人です。しかし、このDIY Droneというプロジェクトにおいては彼が「最高のスタッフ」であったのです。クリス・アンダーソンさんが決して彼を求めた訳でなかなく、彼がクリス・アンダーソンさんを探し当てたのです。

ここに、新しい時代の物作りのヒントがあります。クリス・アンダーソンさんはこの3D RoboticsでフルタイムのCEOとなるために、WIREDの編集長を辞める事となりました。

——-

 

なんだか、ものづくりの動きというと、自分でもわかった気になっていたけど、それよりももっと大きな事が動いているのかなと感じた講演だった。いろいろ自分でも考えてみよう!

【更新版】processing上で作成したandroidスケッチから.apkファイルを生成するには

以前のエントリーで、自分用のメモとして書いたのは良かったものの、訪問してくれたユーザーの方が見るには不便な状態かと思ったので、書き足す事にしました。

更新内容としては、参考リンクにあげられていたステップの解説です。

手順としては、以下の通りとなります。よろしければ、ご参考していただければと思います。

<当方の実行環境>
mac os x (ver. 10.7.4)
processing 1.5.1

<apk化手順>
【スケッチのエクスポート】
・apk化したいスケッチが開かれた状態で、processing PDEをアンドロイドモードに変更されている事を確認。

・PDEインターフェース上にある”Export Android Project”ボタンを押す。(写真参照)

・スケッチがあるフォルダ内に”android”というフォルダが生成される。

ここまでは、カンタンですね。

【スケッチのサイン】
さて、ここからコマンドラインをたたくなど、若干ハードルはあがりますが、やってみるとそんなに難しくないです。それではいってみましょう。

・シェルを開く。マック環境ならTerminal.appを立ち上げる。

・シェル内にて、スケッチがあるフォルダまで移動。

・さらに、さきほどのエクスポートの結果で気上った /android/の中にまで移動。

・そして、つぎはシークレットキーの作成を行います。

・シークレットキーの作成の為に、以下のコマンドをシェルにぶち込む。

user$ keytool -genkey -v -keystore <SKETCHNAME>-release-key.keystore -alias <YOURNAME> -keyalg RSA -keysize 2048 -validity 10000
(<SKETCHNAME>, <YOURNAME>は適宜書き直してください。)

ちなみに私は、”fightlog”というスケッチをここでapk化しようとしていたので、以下のようなコマンドになりました。

keytool -genkey -v -keystore fightlog-release-key.keystore -alias Togo -keyalg RSA -keysize 2048 -validity 10000

・そうすると、なんかいろいろ聞かれます。
私の環境では、日本語で下記の内容を聞かれました。
※ここで、シェル上にて表示される質問項目が文字化けするという人は、一番下にある方法を試してみてください。
「キーストアーのパスワードを入力してください。」
「新規パスワードを再入力してください」
「姓名を入力してください」
「組織単位名を入力してください」
「組織名を入力してください」
「都市名または地域名を入力してください」
「州名または地方名を入力してください」
「この単位に該当する2文字の国番号を入力してください」

・一通り終わると、以下のメッセージが表示されればオーケーです。

<SKETCHNAME>-release-key.keystore を格納中

・lsコマンドで確認すると、あたらしくファイルが出来上がっています:<SKETCHNAME>-release-key.keystore

【”unsigned .apk”をつくります】

・antコマンドを利用し、unsigned apkを生成します。

user$ ant release

・なにやらごちゃごちゃ始まりますが、次のようなメッセージがでてくればオッケーです。

BUILD SUCCESSFUL
Total time: 6 seconds

・よく見ると、 /bin/の中に、 <SKETCHNAME>-unsigned.apkというファイルが出来上がっています。

【unsigned .apkを前述のシークレットキーでサインします】

・シェル内に今度は以下のようなコマンドをぶち込みます。

user$ jarsigner -verbose -keystore <SKETCHNAME>-release-key.keystore <FULL PATH TO>\android\bin\<SKETCHNAME>-unsigned.apk <YOUR NAME FROM SECRET KEY STEP>
※<SKETCHNAME>, <FULL PATH TO>, <SKETCHNAME>, <YOUR NAME FROM SECRET KEY STEP>は適宜入力。

・”adding” “signing”やら、なんやらいろいろ出てきます。

【jarsignerがきちんと機能したか、確認する】

・あともうちょっとです!さきほどのjarsignerコマンドが機能したかどうか、以下をシェルにぶち込み確認します。

user$ jarsigner -verify <FULL PATH TO>\android\bin\<SKETCHNAME>-unsigned.apk
※<FULL PATH TO> <SKETCHNAME>は適宜入力。

・以下のようなメッセージが出れば成功です。

jar verfied.

【最後にサインした.apkファイルを生成する】
・以下をまたシェルにぶち込みます。

user$ zipalign -v 4 <FULL PATH TO>\android\bin\<SKETCHNAME>-unsigned.apk <SKETCHNAME>.apk
※<FULL PATH TO>, <SKETCHNAME>は適宜入力。

・いろいろごちゃごちゃ出てきますが、以下のようなメッセージがターミナルに出力されればオッケーです。

Verification successful

・そうすると、目当ての.apkファイルが出来上がっているはずです!

<途中にあったスタックポイント>

1.)macのターミナルでコマンドを実行しようとしたら文字化け。

ターミナルの文字エンコーディングと、javaの文字エンコーディングの違いによるものらしい。
ターミナルの文字エンコーディングを、shift-jisに変更し、対応。
※写真参照

2.)zipalignコマンドがどういう訳か動作せず。
ローカル内を検索したところ、コマンド自体は存在していたので、コマンドのパスを通し、無事解決。

<参考にしたリンク>

https://forum.processing.org/topic/exporting-processing-s-pde-to-android-s-apk
http://www.akeric.com/blog/?p=1352

 

wordpressブログでたまっている大量のspamを消し去る方法

ブログをアップデートした、というのは先日書いた通りだが、アップデート前にブログのスパム対策をほぼ何もしていなかったため、承認待ちになっているスパムが大変な量になっていた。

これを跡形も無く消し去る方法(スパムの量が多くなればなるほど、手動で消していくのは大変な作業である)をネットで調べものをしていたら発見したので、後学の為に残すとともに、シェア。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

(1)使用しているホスティングのバックエンドサービスにログインする。

どこのホスティングサービスを使っているかによるが、ホスティング会社によっては、バックエンドサービス(e.g. cPanel)を提供している事がある。ここではcPanelを前提に話を進める。まず、cPanelにログイン。

cPanelの画面はこんな感じ。


(2)phpmyadmin経由で、ブログのデータベースにアクセスする。

cPanel内に、phpmyadminをさがし、クリック。

こんなアイコンである。

ブログのデータベースを選択する。”SQL”と書かれている箇所をクリックし、SQLコマンドが入力できるテキストボックスが出てくるはずだ。

“Run SQL query”と書かれているところがそれである。

(3)SQLコマンドをぶち込み、憎いスパムを殲滅する。

このテキストボックスに、以下のSQLコード入れる。

DELETE FROM wp_comments WHERE comment_approved = ‘0’

※操作を誤ると、データベースに重大な損傷をきたす可能性もあるので、実行の際には十分に注意する事。

実行後、“40213 rows affected”みたいなメッセージが出れば、完了だ。もう一度wordpressの管理画面を開いてみるといい。

そうするときれいさっぱり、スパムが消えている!

気持ちがよいものである。