ちょっと、若干曖昧なところもあるが、後学の為に、自分が見聞きした事で、メモした事を余さず書き記す。
Open Network Labが主催する、「グロースハックカンファレンス」に行って来た。
シリコンバレー・日本で最先端のグロースハッカーが集結!Onlab [Growth] Hackers Conference 2013
ここ最近、語られる事が多くなって来た「グロースハック」について、国内外からスピーカーを招き、自らの経験をもとにそれぞれがグロースとは何か語る。
スピーカーはこの5人。
・Sean Ellis氏
・Gustaf Alstromer氏
・古川 健介氏
・Ilya Lichtenstein氏
・松本 龍祐氏
今回のポストでは、そのうちの二人を見ていくとしよう。
スピーカー一人目:
Sean Ellis -Qualaroo社CEO-
Qualaroo社CEO。Qualarooとは、ウェブサイトへの訪問者の動向を分析し、彼らの行動に影響を与えることで顧客との繋がりを強化するマーケティングツールである。Qualaroo以前には、Sean氏はLogMelnとUproarにてローンチからナスダックへのIPOまでを行い、Dropbox、Lookout、Xobniを市場へ送り出すことを指示した。また、Eventbrite、Socialcast、Webs、 World Golf Tour、Wordpress.com、Songkickといったサービスの成長を加速させた。
ちなみに、Growthhackという言葉を作った人。
「グロースハック」という言葉を作った本人がわざわざ来てくれるんだから、千人力だ。
後ほど、直接お話しして、いろいろ相談したりしたが、フランクですごく良い方だった。
じつは、ちょっとだけ冒頭聞き逃してしまったのだが、印象に残ったのが、下記スライドで説明していた概念。
グロースハックの段階
そもそも、「グロースハック」とは、どの段階で語られるべきものか?このスライドをみるとわかるが、”Growth Transition ” “Scale Growth” の前に”Product/Market Fit”という土台の所がある。
“Product/Market Fit”とは、Sean曰く、そのプロダクトが特定の人にとって「無くてはならないものになっている」状態の事を指す。
この”Product/Market Fit”が到達している段階でこそ、グロースは意味があるとSean Ellis氏は説く。
では、Product/Market Fit(PFM)はどのようにして図るか?
ユーザーに直接、「このプロダクトがもう二度と使えなくなるとしたら、どう思いますか?」と聞いてみるのである。
この質問に対して、ターゲットグループが40%であれば、次のステージ(つまりグロースへの第一歩)に行くサインだと言う訳だ。
※ターゲットグループの40%と言うところに注意。すべてのユーザーである必要は無い。サービスのターゲットにしたいユーザーで良い。この段階に到達する前に、グロースを目指すのは、もったいないし、危険でさえある。※二人目のスピーカーである、Gusutaf Alstromer氏は、Gmailの開発者の”Hundred Happy Users”(100人の幸福なユーザー)という言葉を紹介しており、これがまさにPMFに到達する事と同義だと思う。
“Network Effect Exception”
また、”Network Effect Exception”という話もあった。
「グロース」の対象が、すべてがすべて、顧客基盤の拡大、と言う訳ではないと言う事だ。
Network Effectがかかるプロダクトとそうじゃないプロダクトがある。
Network Effectがかかるプロダクト。:ユーザーが増えるたびにプロダクトの価値が高まる。Facebook, Skype, Ebayなどが好例。
そうじゃないプロダクト: ユーザー数の増減がプロダクトの本質的価値にあまり影響を与えない。Apple iPad, Evernoteなどがそうである。
ネットワークエフェクトがかからないプロダクトに関しては、違う観点からのグロース、を考えるべき。つまり、ユーザーエクスペリエンスの向上がグロースの主目的になるだろう。
グロースの為の社内の文化はいかにして、作るか?
Sean Ellis氏が繰り返し主張していたのは、数字。グロースという素地をチームの中に作るには、まず「データを見る」という文化から始める事。そして、グロースハックは特定の人だけのものでなく、チームすべての人のものだということも強調していた。Sean Ellis氏の後のスピーカーでもあったGustaf Alstronomer氏も言っていたが、Airbnbのグロースチームはエンジニア、デザイナーのチームで構成される。今回の講演の中ででた話ではないが、Sean Ellis氏のブログを読むと、グロースのチーム内に、手を動かせる人間の存在(例えばエンジニア)は重要である、と語っていた。グロースは、誰かがやっているから、自分には関係ない、ではなくチームの中に空気のように存在すべきで、すべてのチーム員はデータ・オリエンテッドであるべきなのだ。
また、当然ながらデータを漫然と眺めているだけでも不十分だ。データがそろった後は、「好奇心」から始まる。なぜ、この事象が起こっているのか?原因はなんだろうか?十分なデータと十分な好奇心がクリエーティビティを生む。
また、顧客にたくさん話を聞く事も、グロースを行う上での有用性の高さを挙げていた。例えば、Sean Ellis氏曰く、Airbnbはローンチする前に、クレイグリストのユーザーに繰り返し話を聞き、マーケットは既に存在している事の自信を客観的な裏づけと共に深めていった。余談だが、Airbnbの立ち上げ当初、Craigslistでポストをして顧客獲得をやりまくっていたが、Craigslis側が”airbnb.com”の文字列を含む投稿をできなくしたらしい…。マーケットプレイスを使い倒すと言う意味では、前述のクリエーティビティにあふれる手法でもあると思う。
ブランド認知よりも、ブランド経験を優先せよ。
グロースをする上で、ブランド経験をしたかどうか?と言うことにも重きを置いていた。先ほど、「ユーザーに話をたくさん話を聞く」と書いたが、これはブランド体験をした人(すくなくとも2回以上)に対して行う方がいいらしい。考えてみるとたしかにその通りで、グロースをしたいのであれば、プロダクトについてよくわかっているユーザー、使っているユーザーから意見を聞くべきで、そうなるとブランドを体験した人、と言う事になる。PMFに到達するという話もそうだし、100人の幸福なユーザーを作る、という話もこことつながる。満足度の高いユーザーからの意見は金言なのである。(KPIもユーザーにしてほしい体験、を念頭に置き、設計すべきである。)
スピーカー二人目:
お次はこの方。
Gustaf Alstromer Airbnb社 Product Manager, Growth
Airbnbのグロースにおけるプロダクトマネージャー。Airbnb以前には、2007年よりモバイルのウェブコミュニティ及び100万人以上のユーザーを持つインスタントメッセージサービスを行うHeysanを共同創設者し、CEO、製品開発を専門としていた。HeysanはY Combinatorのプログラムへも参加している。その後、eBuddyというインスタントメッセージングサービスにてプロダクトマネージャー、Voxerというトランシーバーアプリケーションにおいて、グロースチームの統括を行った。
今回のグロースハックカンファレンスには残念ながら、フィジカルには参加できず、Skype経由での参加となった。講演後、Twitterで質問したら、快く答えてくれた。いい兄ちゃんだった。
ちなみに、Voxerを開発しているときは、Twitterとオフィスをシェアしていたらしい。
講演の中から、拾って来た発言を列挙します。(ほんとはプレゼン資料貰えれば良いのだが、貰えなかった…。)
(以下、講演メモ)
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・週ごとのグロースのレートの違いは、後々、大きな違いをもたらす。例えば、週ごとの成長率が3つあったとして、それぞれ、1% 3% 10%賭した場合、10週間後、信じられない量での違いを見る事になるだろう。(借金が複利で増えていく事を考えると、これはよくわかる。)
・よって、グロースレートを把握する事が重要。グロースレートと時間の経過。
・では、グロースレートの改善とは?それは、「ユーザーがした経験の数」×「経験ごとの改善」としてシンプルに表せられる。
・プロダクトかグロースか?どちらに集中すべきか。
・「多くの会社はグロースをすべきだと思い込みがちであるが、実際は、プロダクトの改善の方が重要だったりする場合もある。」
・では、いつグロースに集中すべきか?
・そのプロダクトは、ユーザーがたくさんんいる事によって向上するのかどうか?例えばAirbnb, Voxer, Twitter, Facebookなどはそうである。だが、Evernoteなどのプロダクトだとそれは違う。シングルユーザーのユースケースが想定されるからである。Evernoteのようなプロダクトであれば、プロダクトの向上にリソースを割くべきである。
・グロースに集中したいのであれば、マーケットで「受け入れられている」ことが前提となる。※Ellis氏のPMFと同じである。
・Airbnbのグロースチームは11人いる。それぞれ、デザイナーやエンジニアである。
・どのような人間をグロースチームとすべきか?
ー好奇心が旺盛で、データとユーザーについて、好奇心を追求できる人。
ーすべての立脚点をデータによって示せる人。
ー人間の心理をよく理解している人。
・ Airbnbチームが使っているグロース用ツール。
ーMixpanel (A/Bテスト用)
ーOptimizely (A/Bテスト用)
ーGoogle Analytics
ーYoz.io (モバイルのネイティブアプリ用)
ー特製ダッシュボード(内製)
・ここから、Voxerの事例にうつる。Voxerは無線のようなコミュニケーションツールとして機能する。グロースの考え方はVoxerにどのように寄与したか?
・もともと、「コミュニケーションツール」と言うカテゴリーから行くと、VoxerはHeytell, Tiki, blip.me,や Talkboxなどのグロースレートが大変高い競合が既にいた。
・その中で、Voxerが伸びる可能性があったのは、SMSでのInvite送信であったり、友人のマッチングする際に置ける。ユーザーのアクティベーションのフェーズだった。
・Voxerには、ユーザーがアプリをダウンロードし、立ち上げた際に、いくつかのフィールドを使って友人関係のマッチングを行い、アクティベーションを行う。Facebook ID/ 電話番号 / Emailの情報であったり、FB ソーシャルグラフ / アドレス帳における友人関係の情報だ。
・プロセスはこうだ。
①Email、電話番号、Facebook IDを介した、自動マッチング作業。
②そこから抽出した友人に対してのプッシュ通知。
③アクティベーション → 最初のユーザー体験へとつながる。
ここでの数字のすべてを、mix panelで把握した。
・どの画面を何パーセントがタップしたか。何パーセントが送信ボタンを押したか。その数値を見ながら、「バイラル係数」を算出。
・グロースの為に、すべてのステップを数値化した。(すべての数値を見ろ、と言う事ではない。)
・このVoxerが「全米1ユーザー数が伸びているアプリ」になるまでの流れが興味深いと思う。
・それまで、iPhone版しかなかったアプリだが、2011/11/1にAndroid版をリリース。
・2011/11/29 1日250,000+Userが増える様になる。
・2012/12/6に全米1ユーザー数が伸びているアプリとしてメディアに取り上げられる。
・Android版出しただけでそんなユーザー数が伸びるのか?
・Androidだと、ユーザーパーミッションの取り方がiPhoneとは違うので、かなり別のユーザーエクスペリエンスを提供できる。
・それが結果として、iPhone版ユーザーにも波及し、驚異的なグロースをたたき出す結果になった。
・メディアに取り上げられるなど、アーンドメディアの効果はありつつも、基本的には広告に関して、$0の費用投下だった。すべて、オーガニックでバイラルに伸びた数字だった。
・100人のプロダクトを愛してやまない人がいない限り、大規模な人集めにお金を投下すべきではないと思う。
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(講演メモ終わり)
今回のエントリーはとりあえず、ここまで。
(あぁ、でもホントブログ書くのって苦手…。気が向いたら、もう少し推敲します。)