日米間のエージェンシーでのアイデア出しのアプローチが違って面白かった 〜その2〜

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さて、前回も書いたエントリーだが、その続きだ。ニューヨークチームと打ち合わせをする際、他にもいくつか自分が感じた仕事の進め方や姿勢の違いがあった。

【面白かったその4:ECDが大まかな方針を決める。CDがそれをつめる。分業がしっかりしている】

ECD/CDの権力が強いとか、たしかにそういう事もあると思うが、会議の進め方、ということもあるのかもしれない。日本だと、「和を大事にする」というか、一応合意を形成しながら進めていく「集団で進む」という気配が打ち合わせの中で感じられる事が多いが、ニューヨークでの打ち合わせは、ECDが大きく方針を決めて、それに向かってがんがんみんなで進んでいく、という様子が感じられた。ECDが案の方向性を決めていき、足りない部分も示していく。その足りない部分を埋める事についてはCDに指示をして、CDは後ほど他のチームメンバーを集めてその足りない部分をきちんと補強する。再度集まった際、どのようなプロセスで考え、どのように指示された不足を補ったのかは、きちんとCDの口から説明がなされる。


【面白かったその5:ストラテジストが、外から、いろいろ言う】

打ち合わせにストラテジストも参加するのだが、面白かったのは、(わざとなのかどうかは定かではないが)打ち合わせスペースの端に座っていることだ。なぜ、端に座っているのか?外野席からやいのやいの言うためだ(笑)クリエーティブが提示するアイデアに対して、「これは、〜〜〜という観点からストラテジーとも合致する」「これは、〜〜〜という観点を直せばさらにストラテジーと親和性が高まるのではないか?」という事を投げかける、いわば「軍師」的な役割をしている。すべての案を俯瞰的に見るために、あえて端に座るのだろうか?ちなみにそのときの打ち合わせには、二人ストラテジストがいたのだが、二人とも端に座っていたので、偶然ではない気がする。


【面白かったその6:ブリーフをすごく気にする】

クリエーティブでの打ち合わせをしている際、「これはオン・ブリーフかしら?(ブリーフの内容と合致しているか?)」という発言が日本よりも多い気がした。日本だと、ブリーフからは多少外れていても、面白さを重視し、あえて残したりする事も多々あると思うが、ニューヨークのチームはこの辺りはより厳格だった。もしかしたら、個人の資質というか、傾向によっているだけなのかもしれないが。

いずれにせよ、感じたのは、打ち合わせの「効率」が良さそうだな、という事。打ち合わせも非常にスピーディーで進み、自分が予想していた打ち合わせの時間の体感値の70%ぐらいで、打ち合わせが終わっていた気がする。
いろいろと参考になった出張だった。

日米間のエージェンシーでのアイデア出しのアプローチが違って面白かった〜その1〜

 

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しばらくぶりの更新となった。

実は仕事で、ここ数日、ニューヨークに出張に行っていた。

一緒に仕事を行っている、クリエーティブエージェンシーとの打ち合わせのためだ。

現地で、チームメンバーと共に何度かブレストを行ったのだが、そこでのアイデアの出しのプロセスが、日本のそれとは違っており、大変参考になったので、個人的に面白かったポイントをメモ代わりに書いておく。


【面白かったその1:キックオフミーティングは、営業、クリエーティブ、ストラテジー、みんなやってきて、ECDがオリエンする】

クリエーティブ開発を行うにあたり、キックオフミーティングを行うのは、もちろん日本と同じで、クリエーティブに限らず、営業やストラテジストも入るのも特段珍しい事ではないが、キックオフの説明を行うのがECDというのが、興味を引いた。

ECDが、きちんと概況の説明から、ブリーフの説明を詳細に行い、どんなアイデアを求めていて、どんなアイデアは避けるべきか、明確な指針がくだされるのだ。

また、キックオフのミーティング自体も非常に短い。説明と議論を含めて、合計1時間弱ぐらいで終わって、すぐに解散となる。

日本でも、キックオフミーティングの段階で、ECDだったり、CDが指針を示すのはもちろんだが、ECD自身がキックオフ資料を自分で作り、そしてそれを説明しているのは、いつもの日本で慣れている作業フローとはまた違った感覚を感じ、新鮮だった。

【面白かったその2:2〜3人ぐらいの細かいチームに「分解」して、アイデア出しを進める】

キックオフミーティングの際、日本とはまた違う新しいメソッドに遭遇した。

一通り、キックオフミーティングでの説明が終わった後、急に「じゃあ、今回のミニチームなんだけど…」と切り出すCD。一人で案出しをして、アイデアの持ち寄りをするのかと思っていたら(日本ではそうする事が多いと思う)、キックオフミーティングに参加している10人ぐらいをさらに2〜3人で構成される細かいチームに分解して、その中でアイデアを相談し合って、アイデアを考えろというのだ。

私が一緒に組んだのは、デザイナー、ストラテジスト、そして私、の3人だ。意図的に、役職が違う人たちとのチーム編成になっている。

バラバラなチームを「わざと」組ませてアイデア出しをさせるところに、日本との違いを感じ、面白さを感じた。

【面白かったその3:一番最初の持ち寄りの段階では、「文字」だけでアイデアを書き出す】

ここが、一番面白く感じたポイントかもしれない。アイデアの各々で考えた後、みんなで集まっていわゆる「持ち寄り」を行うのだが、このときのアイデアの持ってきかたが日本と決定的に違った。

ちなみに、日本では一枚の紙に案をまとめたものを「ペライチ」とか「一葉一案」と言ったりするが、アメリカでは”One Sheeter”と言うらしい。この言葉を知っているだけで、グローバルに明るいクリエーティブとして、通ぶれるかも?!(笑)

さて、この”One Sheeter”なのだが、文字だけでしか書かれていない。内容は、

  1. インサイト
  2. アイデアの内容
  3. それがどう機能するか

の3点が書かれているだけ。この、3点が書かれたフォーマットを事前にメンバーに配布し、持ちより参加者は、このフォーマットで書かれた案をひたすら壁に貼っていく。

私は、日本でのアイデア出しの方法論に則って、「文だけじゃ、ぜってーみんな、わかんねーだろ」とせっせと、考えた案に対して、一枚一枚ビジュアル(いわゆる「ポンチ絵」)も持っていったのだが、打ち合わせで披露される事はなかった。

なぜか。

というか、そもそもなぜ日本のアイデアの打ち合わせでは、「絵」をつけるのか。そこには、とても、「おもてなし的」な職業意識が働いているからだと思う。

つまり、案を出す側のスタッフが、聴いている側のスタッフに対して、「より分かりやすく」「より簡易に理解してもらえるよう」に、絵を付け足し、案の内容を分かってもらうために、そして、後からどのアイデアがどうだったか、分かりやすくするために絵をつけるのだ。

だが、この文字だけのOne Sheeterの場合、根幹の成り立ちから全く違う。

「わざと」案を分かりにくくしているのだ。

アイデアのコアを文字だけに限定し、ビジュアルがない状態で案を説明させる事でそのアイデアはシンプルなのかどうか、文字だけの説明でもきちんと通用するのかどうか、判別をしているのだ。

アイデアをプレゼンする際、解像度というか、粒度を合えて下げる事で、案の説明をしている段階でセレクションがある程度はじまるのだ。


 

どちらの手法が良い/悪いという事は全くなく、チームやメンバーにあう手法を適用すれば良いと思うが(参照記事:R/GAのブレスト方法)こういったアプローチの違いを知る事は、視野が広がって、大変に興味深い。

…さて。だいぶ長くなってしまったので、他に気になった事は次のエントリーとしてまとめようと思う。