日米間のエージェンシーでのアイデア出しのアプローチが違って面白かった 〜その2〜

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さて、前回も書いたエントリーだが、その続きだ。ニューヨークチームと打ち合わせをする際、他にもいくつか自分が感じた仕事の進め方や姿勢の違いがあった。

【面白かったその4:ECDが大まかな方針を決める。CDがそれをつめる。分業がしっかりしている】

ECD/CDの権力が強いとか、たしかにそういう事もあると思うが、会議の進め方、ということもあるのかもしれない。日本だと、「和を大事にする」というか、一応合意を形成しながら進めていく「集団で進む」という気配が打ち合わせの中で感じられる事が多いが、ニューヨークでの打ち合わせは、ECDが大きく方針を決めて、それに向かってがんがんみんなで進んでいく、という様子が感じられた。ECDが案の方向性を決めていき、足りない部分も示していく。その足りない部分を埋める事についてはCDに指示をして、CDは後ほど他のチームメンバーを集めてその足りない部分をきちんと補強する。再度集まった際、どのようなプロセスで考え、どのように指示された不足を補ったのかは、きちんとCDの口から説明がなされる。


【面白かったその5:ストラテジストが、外から、いろいろ言う】

打ち合わせにストラテジストも参加するのだが、面白かったのは、(わざとなのかどうかは定かではないが)打ち合わせスペースの端に座っていることだ。なぜ、端に座っているのか?外野席からやいのやいの言うためだ(笑)クリエーティブが提示するアイデアに対して、「これは、〜〜〜という観点からストラテジーとも合致する」「これは、〜〜〜という観点を直せばさらにストラテジーと親和性が高まるのではないか?」という事を投げかける、いわば「軍師」的な役割をしている。すべての案を俯瞰的に見るために、あえて端に座るのだろうか?ちなみにそのときの打ち合わせには、二人ストラテジストがいたのだが、二人とも端に座っていたので、偶然ではない気がする。


【面白かったその6:ブリーフをすごく気にする】

クリエーティブでの打ち合わせをしている際、「これはオン・ブリーフかしら?(ブリーフの内容と合致しているか?)」という発言が日本よりも多い気がした。日本だと、ブリーフからは多少外れていても、面白さを重視し、あえて残したりする事も多々あると思うが、ニューヨークのチームはこの辺りはより厳格だった。もしかしたら、個人の資質というか、傾向によっているだけなのかもしれないが。

いずれにせよ、感じたのは、打ち合わせの「効率」が良さそうだな、という事。打ち合わせも非常にスピーディーで進み、自分が予想していた打ち合わせの時間の体感値の70%ぐらいで、打ち合わせが終わっていた気がする。
いろいろと参考になった出張だった。

日米間のエージェンシーでのアイデア出しのアプローチが違って面白かった〜その1〜

 

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しばらくぶりの更新となった。

実は仕事で、ここ数日、ニューヨークに出張に行っていた。

一緒に仕事を行っている、クリエーティブエージェンシーとの打ち合わせのためだ。

現地で、チームメンバーと共に何度かブレストを行ったのだが、そこでのアイデアの出しのプロセスが、日本のそれとは違っており、大変参考になったので、個人的に面白かったポイントをメモ代わりに書いておく。


【面白かったその1:キックオフミーティングは、営業、クリエーティブ、ストラテジー、みんなやってきて、ECDがオリエンする】

クリエーティブ開発を行うにあたり、キックオフミーティングを行うのは、もちろん日本と同じで、クリエーティブに限らず、営業やストラテジストも入るのも特段珍しい事ではないが、キックオフの説明を行うのがECDというのが、興味を引いた。

ECDが、きちんと概況の説明から、ブリーフの説明を詳細に行い、どんなアイデアを求めていて、どんなアイデアは避けるべきか、明確な指針がくだされるのだ。

また、キックオフのミーティング自体も非常に短い。説明と議論を含めて、合計1時間弱ぐらいで終わって、すぐに解散となる。

日本でも、キックオフミーティングの段階で、ECDだったり、CDが指針を示すのはもちろんだが、ECD自身がキックオフ資料を自分で作り、そしてそれを説明しているのは、いつもの日本で慣れている作業フローとはまた違った感覚を感じ、新鮮だった。

【面白かったその2:2〜3人ぐらいの細かいチームに「分解」して、アイデア出しを進める】

キックオフミーティングの際、日本とはまた違う新しいメソッドに遭遇した。

一通り、キックオフミーティングでの説明が終わった後、急に「じゃあ、今回のミニチームなんだけど…」と切り出すCD。一人で案出しをして、アイデアの持ち寄りをするのかと思っていたら(日本ではそうする事が多いと思う)、キックオフミーティングに参加している10人ぐらいをさらに2〜3人で構成される細かいチームに分解して、その中でアイデアを相談し合って、アイデアを考えろというのだ。

私が一緒に組んだのは、デザイナー、ストラテジスト、そして私、の3人だ。意図的に、役職が違う人たちとのチーム編成になっている。

バラバラなチームを「わざと」組ませてアイデア出しをさせるところに、日本との違いを感じ、面白さを感じた。

【面白かったその3:一番最初の持ち寄りの段階では、「文字」だけでアイデアを書き出す】

ここが、一番面白く感じたポイントかもしれない。アイデアの各々で考えた後、みんなで集まっていわゆる「持ち寄り」を行うのだが、このときのアイデアの持ってきかたが日本と決定的に違った。

ちなみに、日本では一枚の紙に案をまとめたものを「ペライチ」とか「一葉一案」と言ったりするが、アメリカでは”One Sheeter”と言うらしい。この言葉を知っているだけで、グローバルに明るいクリエーティブとして、通ぶれるかも?!(笑)

さて、この”One Sheeter”なのだが、文字だけでしか書かれていない。内容は、

  1. インサイト
  2. アイデアの内容
  3. それがどう機能するか

の3点が書かれているだけ。この、3点が書かれたフォーマットを事前にメンバーに配布し、持ちより参加者は、このフォーマットで書かれた案をひたすら壁に貼っていく。

私は、日本でのアイデア出しの方法論に則って、「文だけじゃ、ぜってーみんな、わかんねーだろ」とせっせと、考えた案に対して、一枚一枚ビジュアル(いわゆる「ポンチ絵」)も持っていったのだが、打ち合わせで披露される事はなかった。

なぜか。

というか、そもそもなぜ日本のアイデアの打ち合わせでは、「絵」をつけるのか。そこには、とても、「おもてなし的」な職業意識が働いているからだと思う。

つまり、案を出す側のスタッフが、聴いている側のスタッフに対して、「より分かりやすく」「より簡易に理解してもらえるよう」に、絵を付け足し、案の内容を分かってもらうために、そして、後からどのアイデアがどうだったか、分かりやすくするために絵をつけるのだ。

だが、この文字だけのOne Sheeterの場合、根幹の成り立ちから全く違う。

「わざと」案を分かりにくくしているのだ。

アイデアのコアを文字だけに限定し、ビジュアルがない状態で案を説明させる事でそのアイデアはシンプルなのかどうか、文字だけの説明でもきちんと通用するのかどうか、判別をしているのだ。

アイデアをプレゼンする際、解像度というか、粒度を合えて下げる事で、案の説明をしている段階でセレクションがある程度はじまるのだ。


 

どちらの手法が良い/悪いという事は全くなく、チームやメンバーにあう手法を適用すれば良いと思うが(参照記事:R/GAのブレスト方法)こういったアプローチの違いを知る事は、視野が広がって、大変に興味深い。

…さて。だいぶ長くなってしまったので、他に気になった事は次のエントリーとしてまとめようと思う。

カンヌ2014:U2ボノ&Apple ジョナサン・アイブ対談最終セミナー

あっという間に、カンヌ最終日。そして、最終セミナー。
そして、最終セミナーにふさわしいカード。アップル上級副社長 Sir Jonathan Ive氏とU2 BONO氏の対談。モデレーターは、VICEマガジンのCEO, Shane Smith氏だ。

このセミナー、まず、人がすごい。Sarah Jessica Parkerやう、Sir John Patrickなどのセレブリティーが参加してたセミナーもすべて含め、これまで出たどのセミナーよりも人が多かった。私は、1時間半前から、別のセミナーに参加して、そのまま席を陣取った。

DSC_0123まず、前列すべてにカメラマン達が陣取り、前が見えない。最前列の人はちょっとかわいそうだった。右がBONO、中央がShane Smith、左がSir Jonathan Ive。BONOはとりあえず、グラサンをかけている。ロックスター感満載。

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今日の対談のメインテーマはREDプロジェクトについてだ。REDプロジェクトは、アップルとの関連が一番有名だが、2006年にU2のボーカルであるBONO氏によって立ち上げられたプロジェクトだ。目的は、アフリカのエイズを撲滅すること。アップル以外にも、上のスライドにある企業と様々な形でコラボを行い、プロダクトの売り上げから、エイズ撲滅のために寄付を行う、というものだ。アップルだと、赤いipodとかipadが有名だ。

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モデレーターのShane Smith氏が話を振りながら、Bono氏とJonathan Ive氏から話を引き出していくのだが、BONO氏はすごいですね。自分のプロジェクトに本当に情熱を持っているのがこちらにも伝わってるように語るし、ちょいちょい、ジョークを挟んでくれるのも、気が利いていて格好いい。

昔、Steve Jobs氏とBONO氏がREDプロジェクトでの打ち合わせをしているとき、BONO氏から「アップルロゴにかっこ()をつけさせてくれ」と申し入れたときに、けんもほろろに断れたらしいのだが、※Redプロダクトは、かっこ()がコンセプトを表す大事なキービジュアル。

“So when Steve told me that nothing interferes with the logo, I just thought, well, cram up your phone in the ass…and that was before the iPhone by the way guys!”
(スティーブに、アップルのロゴの周りは絶対に不可侵だ、と言われたとき、こいつのケツにこいつの電話をぶっ刺してやろうかと思ったよね・・・あ、ちなみに、これ、iPhoneの前の話ね!)

会場大受け。とにかく話が面白い。芸人の話聞いてるみたいだった。

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ちなみに、さらにすごいなと思ったのが、この上の写真。BONO氏の上にREDプロダクトのiPadがあるのだが、いきなりケースを外して一言。

「みなさん、これちょっと見てくれる?REDのロゴがね、iPadのケースの後ろにあって全然見えないの!」

「ジョニー、どうよ、これ?直そうよ!ね!」

といきなり、Jonathan Iveに直談判。(むしろ軽くディスってる)。が、そこはJonathan Iveも大人。ちょっと憮然としながらも、

“Modesty is the Apple way…”
(控えめであることは、アップルのやり方なんだよ・・・)
とぼそっと一言。

かっこいい。

そして、会の後半。ここでもさらにびっくりした。いきなり、通路席に赤いバケツみたいなのを持っている人達が現れた。「あれ、寄付金でも募るかな?」と思ったら、これに名刺を入れて、「俺たちと一緒にREDプロダクトをつくろう!」とBONO氏が言い出した。

さらに、「あと、なんか今いいアイデアでたら、発言してさ、俺に教えてよ!」といいだして、「会場総ブレスト大会」/「私、これやります!大会」になった。

中南米の銀行の担当者が「RED銀行口座」をつくることをその場で確約したり、なんか、ネットのドメイン扱ってる人が、世界で一つしか無い .hiv というドメインがあるらしく(?)、それをBONO氏に寄付するとか言い出したり。新手の商法みたいな事になってた。(私も一つ思いついたことがあるにはあったが、あまりにびっくりして戸惑って発言できなかった・・・)

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もう、会場総立ち。音楽のライブでもないのに、ライブ会場みたいになってた。すごかった。

カリスマはこうやって、人を動かして、世界を変えていくんですね。

 

・・・と、そんなわけで、私の初カンヌはこれで終わりました。事例もたくさん見たし、セミナーもたくさん聞きました。いろいろな国の人達と知り合いになり、話し込みました。そして、自分がその会場の中で、なにもコントリビュートできることがないのがただただ、悔しかったです。仕事をするのではなく、「素晴らしい」仕事をする。真摯に研究を怠らず、ゴールを達成するための正しいアプローチを心がけていれば、あるいは、達成可能な事かもしれません。仕事を不在にしてしまい、たくさんの人に迷惑をかけてしまっておりますが、日本に帰国して頑張ります。(カンヌに来てから、何回がんばるという言葉を口にしたか、、、)

カンヌ2014:Future Lionセミナー

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今日は、レイ・イナモトさんがスピーカーをつとめるFuture Lionのセミナーに行ってきた。

前日に、主催者がホストする公式のパーティーがあったので、いろいろやってたら、レイさんを発見!よっしゃ、話しかけに行こう!ってことで、白々しく、何も知らない振りして話しかけて、「あ!あのレイさんですね!失礼しました!」みたいなちょっとした寸劇をやっていたりしたのだが、「実は今やってる仕事で迷っていることがあって、かくかくしかじかこんな内容なんですけど、どう思いますか?」とせっかくなので聞いてみたところ、「それだったら、明日セミナーやるから、聞きにきなよ!」と教えて頂いたので、行ってきた。

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Future Lionとは、9年前からAKQAが主体となって毎年やっている、学生向けの新人発掘セミナーみたいなプログラムだ。お題に対してソリューションを出し合い、その内容を競う。カンヌに対する批評でよくある一つに、「カテゴリーに分けることに意味はあるか?」というものがある。Future Lionはその批評に対するアンチテーゼという意味合いもあり、カテゴリーは特にない。参加者は、アウトプットをカテゴライズせずに、自由にソリューションを考えられる。AKQAは、これを毎年無償でやっている。かわいらしいライオンがマスコットキャラだ。ちなみに、今回は40超の国からの参加で1700以上の応募があったとのこと。メインのカンヌカテゴリーよりも多くのエントリーがあるような部門になりつつある。一番応募が多いのは、アメリカとイギリスで、信じられないことに、日本の応募数は「25」だそうです。せっかくのプログラムなのに、本当にもったいない・・・。

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肝心のお題だがだが、きわめてシンプル:
「5年前には不可能だった方法で、ブランドとターゲットを結びつけよ。手法/ブランドは不問。」
どうだろうか?わくわくしないだろうか?(ってか、自分も応募できたらしたかった)

今年は、以下のエントリーが入賞していた。

Google Gesture

最近のガジェットで、自分の筋肉の動きで、ジェスチャーを検知できる、というものがあるが、これをGoogle翻訳とつなげて、手話をスピーチに変換する、というもの。きちんと、既にあるテクノロジーを使っているし、できそうな感じもする。が、ありそうでなかった、というところが憎い。

Donate by Update

これも非常にうまいと思った。Redプロダクトが一時期流行ったが、既にアップル製品を持っている人達に対して、以下に買う意味をつくるか?というのが出発点。だとするならば、製品を買わせるのではなく、OSのアップデートを課金することで、寄付を集めるようにしよう、というもの。問題に対してのソリューションが、鮮やか。

Do Zero For Climate Change

アイスを保存するのに、不必要に温度の低い冷蔵庫である必要は無い。そこに着目したネタ。

HEARt Me

子どもの心臓の不穏な動きをウェアラブルTシャツで検知し、親のスマホに情報を送信。それだけでなく、心拍数のデータを研究目的で使うこともできる、というアイデア。

Passion is Power

深刻な電力不足に悩むブラジルで使うことを想定した事例。スタジアムに、衝撃で発電ができるマットを導入。ワールドカップの実施が、電力不足の解決に繋がる、という昨今のブラジルのワールドカップのデモを解決するのに役に立ちそうな事例だ。

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ちなみに、受賞した作品のアイデアを考えた学生達が壇上に上がっていくのだが、そのときに男女のペアでコンビを組んでいたグループがいて、男が女にキスをして上がっていったやつがいて、格好いいことこの上ない。負け組気分をこれ以上にないほど増長された。

・・・明日から、がんばろう。

と、そんなことはさておき。
レイさん、最後にこんな事をそういえば言っていた。

“Technology should function to remove friction.”
“And both the brand and the technology should function to serve the humanity, if not to change the world, but to make a dent in the universe.”

物事を難しく、大変にするのはテクノロジーの本意ではない。
そして、究極的には、ブランドを通じて我々がつくるものが、少しでも世界をよくするようにする。

もしかしたら、自分の仕事のヒントはここにあるのかもしれない。

カンヌ2014:課題解決のために「ハック」した事例5選

クリエーティブ部門に移ってから、いろいろな人に体系的にやれと言われていることがあり、それはとにかくたくさんの事例を見て、研究する事である。今回、カンヌに来ているのも、浴びるように事例を見る事が、目的の一つだ。

事例をいろいろ勉強するようになり、何となく自分の好きな「カテゴリー」があることに気付いた。

「こんな簡単なやり方があったのか!という手法。「ずるい!」とさえ思えてしまうような手法。ある種、「ハック」するような方法に、自分としては強く惹かれるところがある。

まとめられれば、他のエントリーで、またかければと思うが、会場で審査員に話を聞いてみたりすると、賞をとる事例は、とにかく「アイデア」の良さが繰り返し語れるのだが、自分が好きなハック的手法にはこのアイデアの要素が強く内包される。時には狡猾にすら思える、予想を裏切る手法で、見事に目的を達成し、課題を解決する。また、その裏切りのプロセスが、きわめて人間的なので、コミュニケーションに接近した人も、「あ、こりゃやられたな」という風になる。これはアイデアである。自分も、こういう事例をやってみたいと思う。

カンヌで、様々な受賞作品を観ながら、そんな「ハック」的な作品があったので、自分がこれまでみたもののいくつかをここで紹介できればと思う。

Brother In Arms “Bank Job” 〜①銀行の振り込み通知をハックする〜

Brother In Armsはチャリティー団体だ。寄付を募るために、企業に寄付のお願いをする必要があった。そこで、オンライン送金フォームというプラットフォームを逆手にとり、こちらから寄付をしてくれそうな企業に「勝手に」お金を送金する。そのときに、備考欄にちょっとずつメッセージを記載し、何回も送金すると。送られた側からすると、大量の少額の入金があり、しかもそれを続けて読むとメッセージになっている。そして、すごいのは、ただメッセージを送るだけでなく、送られたお金がエラーとして出てくるので、先方はお金を返さなければならず、返すには電話をするしかない。ある状況を逆手に取り、向こうの行動を無理矢理規定する。スト2のハメ技のようなやっかいさだ。これは、まさしくハックだと思う。

“Phubbing” 〜②言葉をハックする〜

オーストラリアの国語辞典の事例。「言葉とは変わり続けるものだ」ということを訴求するために、考え出された事例なのだが、やり方がえげつないぐらいすごい。何をしたかというと、国語学者や、クロスワードパズル師などの、言葉に関するエキスパートを集めて、「スマホに夢中になって、人の話を聞かない」という動詞はどんな言葉か?ということを議論。結果、”Phubbing”という言葉を開発。そして、この言葉が、実際に動詞として人々の間で浸透。「言葉をつくる」という荒技をどうやってやったのか詳細は分からないが、言語をハックする、というアイデアがすごい。

“Removal Happens” 〜③Youtubeの仕組みをうまく使う。〜

とある、離婚相談に強い、法律事務所の広告。ちょっと、悲しいというか、何とも言えなくなってしまう広告だ。700人のクライアント候補に、メールを送るのだが、そこにあるのは、ありがちな新婚カップルの結婚式のYoutubeリンク(とその動画のサムネール)。なんだと思って、動画を再生しようとすると・・・。

“#Sochiproblems” 〜④時事ネタを逆手に取る〜

ソチオリンピックは、競技もさることながら、開催直前になってもジャーナリストが使うホテルの設備などが全くできておらず、あり得ないサービスの数々がソーシャル上で話題になったオリンピックでもあった。会場に到着した記者達が、「ホテルの蛇口ひねると茶色い水が出てくるぜ!ありえねー!」とか「部屋の予約が取れてなかった・・・ってか、むしろ部屋自体が完成してないんだけど!!」といったようなツイートがありえなさすぎて世界中で面白がられてバズっていたのだが、この状況をうまく逆手に取ったのがAirbnb。そんな悲壮なツイートをしている記者達に対して、逆にツイートを送り、Airbnbだったら、全然快適だったのに、残念だね!というツイートを逆に送りつける。話題になっている時事ネタにうまく乗っかって、逆に自分たちの話をしてしまう。非常にうまい方法だと思う。

“Incomplete Bios” 〜⑤大事にしたいプロフィールを利用する〜

これも、シンプルで非常に好き。子どもへの施策について言及しない政治家に対して、いかに政策を引き出すか。この事例では、政治家のwikipediaを編集。「子どもへの政策」という項目を対象の政治家のプロフィールに追加。そこをあえて、白紙にする事で、マニフェストに政策が欠落していることを訴求させる。やっていることはシンプルだが、メッセージとしては、強い。

たしかに、効果のほどはどうか?という事例も中には少なくない。だが、問としてあげられた問題に対して、どのようにエレガントに解決策を提示するか、ということについてはアイデアが確かに感じられるものばかりだと思う。

でも、なんだか、ハックハックって、バカみたいですね。

5月気になったトピック:「カンヌ2014直前、注目作品」

4月は何もアップロード出来なかった・・・。勉強の為に、「今のところ、他の広告賞は受賞しておらず、カンヌで注目されるであろう作品」をまとめてみた。「他の広告賞を受賞していない」というところがなかなかトリッキーで、必然的に、最近発表になっている事例が多い。あとあと、答え合わせをしてみると、面白いかもしれない。

No.1:“Speaking Exchange”

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概要:
ブラジルにあるCNAという英会話学校がクライアント。その学校に通う生徒の全員が、ネイティブスピーカーと英会話を練習するチャンスが全生徒にあるわけではないので、特製のツールを開発。シカゴにある老人ホームとのビデオチャットが行えるようになり、老人ホームの居住者が先生役となる。二人の間の会話は録画され、ビデオチャット終了後、プライベートリンクでYoutubeにビデオをアップロード。英会話学校の先生がチェックし、採点する。エージェンシーはFCBブラジル。ローンチ時期は2014年5月頃以前。

何がいいか:
Win-Winな状況を作り出し、クライアントだけで無く、同時に他の部分でのソリューション解決に繋がっているところ。会話が終了した後、先生にチェックさせる、という細かい仕組みまで設計できているのがすばらしい。ツールとしての有用度が高まる上に、トラブル回避にも繋がっている。また、英会話以上の、人と人のつながり、というエモーションの創出(ができているようにみえる)に成功しているところに、見ているこちら側も、すこししみじみしてしまう。Social GoodはSocial Goodでも、「しみじみSocial Good」な事例。

議論ポイント:
Social Goodは、やっぱり評価されるか。Social Goodなら、それでいいのか。

参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=-S-5EfwpFOk
http://adsoftheworld.com/media/online/cna_speaking_exchange

No.2:“Tattoo Artists against Skin Cancer”

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概要:
ビーチで使う日焼け止めなど、日差しが強い場所用のスキンケア商品を製造・販売。ブラジルの「ビーチ・カルチャー」の代表するブランドが、皮膚ガン防止のために一肌脱いだ。ブラジルで活躍する450人のタトゥー師に、皮膚ガンの予兆を見分ける医療知識の研修をオンライン授業として展開。タトゥーを行いに来た人に対して、皮膚ガンの早期発見・予防を促す。毎週18,900人の診察を行った計算に。エージェンシーは、サンパウロのオグルビー。ローンチ時期は、2014年5月以前。

何がいいか/悪いか:
「若い人でも皮膚ガンには実はなりやすい」という問題に「若い人の皮膚をよく見るタトゥーアーティスト」というコンタクトポイントをつなげたのはすばらしく、実際に課題解決にもなっていそう。どうやって、タトゥーアーティスト達にこのプロジェクトに参加してもらったかは謎。ブランドの「志」だけで、果たしていけたのかどうか。あとは、ブランドへの接着が少し弱いか。

議論ポイント:
前述の”Speaking Exchange”とは違いがあるとしたら何か。

参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=jeT3ekZzPpo
http://www.soldejaneiro.com.br/sol-de-janeiro
http://www.adweek.com/adfreak/sunscreen-brand-trains-tattoo-artists-look-signs-skin-cancer-157639

No3:“Honda H2O”

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概要:
Honda AustraliaのFCX(燃料電池電気自動車)のキャンペーン。FCXクラリティーが排出した水を売る、というキャンペーン。ローンチ時期は2014年5月以前。代理店はメルボルンのレオ・バーネット。

何がいいか/悪いか:
パッケージデザインが可愛い。というか、あのHマークの使い方はずるい。シンプル。正直、やられた感がある。が、以前、水を売るようなキャンペーンで似たようなのあったような気が。だが、水を使う理由の必然性が強い。いい話のようで、そうではない。デモンストレーション。

議論ポイント:
以前に、似ているエグセキューションがあった場合、やっぱり評価は下がるのだろうか。

参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=2tU6vio6xns
http://www.adweek.com/adfreak/honda-creates-bottled-water-brand-honor-vehicle-emits-only-drinkable-h2o-157619
http://www.bestadsontv.com/ad/62536/Honda-Honda-H2O

No.4:“Bulk Cat Litter Warehouse DM”

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概要:
クライアントは、Bulk Cat Litter Warehouse。猫用の砂を売っている会社。DMにキャットニップを塗って、DMを投函。すると、猫がじゃれるので、飼い主は思わずDMを拾ってしまう。エージェンシーは、バンクーバーにあるRethink Canadaというエージェンシー。2014年2月頃の事例。

何が良いか/悪いか:
動物倫理的にこれをしていいのかどうかよくわからないが、シンプルで、アイデア的にはわかりやすい気がする。ただ、シンプルすぎて、なんだか、強引で、反則をしているような気もする。動物を巻き込む、という手法は新鮮に思える。もだえる猫の絵は可愛い。が、肝心のデザイン自体は、あんまり可愛くない。

議論ポイント:
キャットニップで猫をだしに使う、という手法がありなのかどうか。デザインの良さとかは、全く評価に関係ない。

参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=Wj4ZJ52xn7c
http://www.adweek.com/adfreak/watch-cats-basically-hump-direct-mail-coated-kitty-crack-155799
http://www.bulkcatlitterwarehouse.com/

No.5: “3D ON THE ROCK”

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概要:
マシンで削り出した精巧な氷の3D彫刻でウイスキーのオン・ザ・ロックを作るという、プロジェクト。特に試飲ができたり、ということでは現在ない。エージェンシーは、TBWA/HAKUHODO。ローンチは、2014年4月頃。

何が良いか/悪いか:
シンプルでわかりやすい。やりそうで、誰もやってない、というところが絶妙。3Dプリントされた氷も美しい。サイトで流れている音楽も、ウィスキーを飲む際の「上がるテンション」「大人感」「おしゃれ感」を絶妙に表現。
SUNTORYのウィスキーは、映画”Lost in Translation”で、有名なので、日本国外の人にも、ブランド的親和性が高い。

議論ポイント:
が、これは、クライアントの何の課題を解決しているのか。「格好いいウィスキーのイメージの醸成」ということでいいのか。いったい、どういうオリエンがサントリーから来ると、こういうことになるのか。

参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=VAAnyUjiNGs
http://white-screen.jp/?p=37998

No.6: “The Protection Ad”

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概要:
ニベアの日焼け止めの事例。子供が海で迷子にならないように、雑誌を切り抜き、子供の腕に巻いておく。アプリで距離を設定し、その距離を子供が離れれば、アプリ側に通知をだす、迷子防止装置。2014年5月以前にローンチ。エージェンシーは、FCBブラジル(英会話事例と同じエージェンシー。強いな・・・。)

何が良いか/悪いか:
絶対、使わないと思うが、やってることは役に立つので良い。複数回使える、という説明も聞いていて良い。素材にこだわりを感じる。MORE PROTECTIONS FOR YOUR CHILDという言葉だけで、日焼け止めと、迷子防止とつなげているが、そこに多少の強引さはは感じる。

議論ポイント:
広くは使われないだろうが、役に立ちそうなものを、どう評価するか。

参考URL:
http://creativity-online.com/work/nivea-sun-block-ad/35203
https://www.youtube.com/watch?v=nZ532wkhHYs

No.7:“The girl that became immortal!”

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概要:
One Earthという環境団体がクライアント。プラスチックを捨てると、分解されるまでかなり長く、ほぼ永遠に残る(Immortal)ということから、着想を得ているキャンペーン。ゴミを捨てた人をターゲットにする。名前をこっそり聞く。そうすると、その人を茶化して、「~~~は不死(Immortal)になりました!」というパレードがいきなり始まる。びっくりしていると、メッセージがでてきて、「ゴミを捨てんな」「プラスチックは半永久的に残るんじゃ」と。2014年4月頃のキャンペーン。エージェンシーは、ミュンヘンのピュビリシス。

何が良いか/悪いか:
ロシアのParking Doucheや、Drama Buttonにひきつづき、個人的には好きなジャンル。まとめ動画を見るのが面白いキャンペーン。サプライズからの実は叱責だった、という落とし方がひどい。Tシャツ売ったりなど、細かいところも芸が効いている。が、やはり、いたずらはいたずら。ターゲットも、本物かどうか。そこに、ひっかかりがどうしても出来てしまうのが、残念か。

議論ポイント:
お客さんをこけにする広告はやっぱり、評価は高くないのだろうか。

参考URL:
http://www.gutewerbung.net/one-earth-one-ocean-girl-became-immortal/
https://www.youtube.com/watch?v=v60Q7Tbct34#t=69

No.8“TWEETING HONEY BADGER”

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概要:
ヨハネスブルグ動物園の新ソーシャルアカウントマネージャーに、ラーテル(Honey Bagder)が就任。Bluetoothが設置されたエージェンシーは、Hellocomputer。ローンチは、2013年11月頃。

何が良いか/悪いか:
かわいい。テレビ的にも伝播のきくことばにしているのが良い。が、本当に動物の言葉ではないので、そこに少し作為を感じてしまう。が、「世界初」と規定したのは良かったのかもしれない。ツイートが、笑えて面白い。(Justin Bieberのまねしたり、Selfieとったり。)

議論ポイント:
「うまく言い換える」(=動物がソーシャル担当になった、みたいなものいい)はどのあたりまで許容されるものか。

参考URL:
http://www.gutewerbung.net/johannesburg-zoo-tweeting-honey-badger/
https://twitter.com/zootweetslive

No.9:“World Under Water”

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概要:
温暖化で、北極の氷が溶けたら?その様子をGoogle Map Street Viewで再現。ほとんどの人が、内陸部まで、水が入ってくる、ということを分かっていない。場所を打ち込むと、どれだけ海面が上昇しているか見れる。

何が良いか/悪いか:
良く見慣れている風景が、どうなるか、を割と高い精度で再現したところに、新鮮みを感じる。が、「結局のところ、自分の近所がどうなるか?ということを見せているだけで、インフォメーションは少ない」という批判も多い。技術的には、いったいどうやっているんだろう?

参考URL:
http://www.adweek.com/adfreak/world-under-water-uses-streetview-visualize-flooding-climate-change-157636
http://worldunderwater.org/

No.10:“Alarm Cap”

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概要:
クライアントは、ネスカフェ。目覚まし機能付き、コーヒー瓶。明けると、止まる。ローンチは、2014年5月以前。エージェンシーは、メキシコのピュビリシス。

何が良いか/悪いか:
一見、デジタルデジタルしてないクライアントで、ここまで強引にやりきったのは新鮮。使えそうで使えないところもまた絶妙。

議論ポイント:
使えそうで使えないプロダクトの評価はどうあるべきか。

参考URL:
http://creativity-online.com/work/nescafe-alarm-cap/35446

SXSW 2013 レポート: “How Twitter Has Changed How We Watch TV”(Twitterはテレビ試聴をいかに変えたか) [Mar. 9]

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SXSW二日目、一番最初のセッション。SXSW公式紹介ページはここから。本当は二日目で参加したセッションをまとめてレポート書こうと思ったが、書いていたらずいぶんと長くなってしまったので、R/GAセッションのレポートと同じく、こちらも独立したポストに分ける事にした。

日本ではなじみが多いテレビとPCの「ながら試聴」。それと近い話だと思うが、ソーシャルメディアとテレビコンテンツの相性についてがメイントピック。講師はジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)。ソーシャルメディア関連の会社を自分で起こしたり、博士号を関連する分野で取得しているなど、ソーシャルメディアに関しての専門家だ。

自分はたまたまラッキーだったが、あとで人から聞くとセッションに入れない人がいっぱいいて、会場の出口に急遽同時中継のテレビが設置され、それに聞き入る人だかりができる、という事態になったようだ…。

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会場の外に出来上がる人だかり(by他のSXSW参加者写真)。SXSWでは、人気のあるセッションは最低でも30分前に到着するのが鉄則!(逆に入れなかったときのがっかり感は凄まじい。)

ジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)氏プロフィール…
Union Metricsの共同設立者およびCOO(Chief Customer Officer)。Organizational Communication and TechnologyでのPhDを取得。

R/GAセッションと同じく、すばらしい事にスライドがここから閲覧可能になっている。

セッション中から気になった発言や考え方をピックアップした。

「テレビコンテンツの配信設計とソーシャルメディアの関係性」
ジェン氏が言うには、コンテンツの配信の仕方によってテレビ番組がO.A.されているときに巻き起こるtweetのパターンが変わるらしい。

【”On-going Series”(継続型)】
いわゆる普通のテレビコンテンツ(ドラマ)の配信の仕方。毎週決まった時間に配信。
このタイプで一番のツイート量を稼ぐのは”Pretty Little Liars”。自分は見た事ないが、大人気ドラマシリーズらしい。

SHAY MITCHELL, ASHLEY BENSON, TROIAN BELLISARIO, LUCY HALE
ワンシーンで最大30,000ツイート叩きだすらしい。

このパターンで、大きなツイートを稼ぎだす番組の他には…

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“The Walking Dead” であったり、

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“American Idol”や、

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“X Factor”などの、オーディション番組がなかなか良いツイート量を稼ぎだすらしい。O.A.されている時に起こっていることが視聴者にとってツイートする重要なネタになる。

【”On-going Series Finale”(継続フィナーレ型)】
先ほどのパターンの派生形。継続型のツイートは、フィナーレ(最終回)を迎えるときに、ツイート量が頂点に達する。逆説的だが、最終回に達する前でも、ツイート量を観測する事で、そのコンテンツが成功しているかどうかある程度わかってしまう。

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例えば、先ほど挙げた “Pretty Little Liars”と”Terra Nova”(スピルバーグ製作のドラマだったが、コケて製作中止に…)だが、どちらも全国規模でのO.A.にもかかわらず、”Pretty Little Liars”が 2時間で90,000ツイートを生み出すのに対し、”Terra Nova”は同じツイート量に到達するまで2週間はかかるとの事…。受けるコンテンツとそうじゃないコンテンツの差が如実に出てしまうのだ。視聴率なんかより、遥かにリアルな数字である。

【”One-time Events”(一発イベント型)】
スーパーボウルなどのイベントがこれに当たる。イベント当日にツイート量の爆発的な伸びが観測される。最近あったオレオのスーパーボル広告ツイートはこのタイプのコンテンツの時間的特性をよく生かした施策と言えるだろう。「結果が予測できない」というのがツイートを生む大きなモチベーションとなる。

【”Streaming All-at-Once”(一度にすべて配信型)】
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“House of Cards”というドラマが引き合いに出されていた。2シーズン分のコンテンツ制作に約100〜200万ドルをかけたこのドラマ。配信権を獲得したのは既存のテレビ局ではなく、なんとNetflix。ネット経由でのコンテンツを配信する事になった。テレビと違って、配信の方法に縛られる事がないのが利点だが、このコンテンツに関しては、隔週という形ではなくとある金曜日に2シーズン分「まとめて」アップロードする事にした。その後のツイート量を調べてみると、これまでのパターンとは明らかに違い、配信直後から伸びたツイートが緩やかに減少していく、という傾向を見せた。

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先ほど挙げた4つのツイートパターンの変化まとめ。

コンテンツ一つとっても、配信の仕方でソーシャルでの広がり方が全く違うのだ。

「ツイッターを介したインタラクティブなコンテンツの作り方」
コンテンツの配信の仕方だけでなく、作り方にも留意すべき点はたくさんある。

【ユーザーとともにコンテンツ作る】
たとえばゴールデングローブ賞の中継。ゴールデングローブ賞オフィシャルのツイッターアカウントがあるのだが、O.A.中に、「授賞式会場に来ているセレブリティでだれの写真を撮ってきてほしいか?」というアンケートを実施。

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結果、アデルが一番投票され、実際にその様子を撮影し、アップ。実際にイベントが起きている時間をユーザーと共有している共時性を利用、コンテンツを作り出す好例。

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こんな興味深い事例も。Archerというコメディーアニメがあるのだが、

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キャラクターにそれぞれツイッターアカウントが存在する。ユーザーがキャラに絡むときちんと返事が来る。面白いのは、アニメの声優が実際にアカウントの運営をしているところだ。コンテンツが好きなツイッターユーザーならきっと絡むだろう。その絡みがまたツイッター上で広がり、新たなコンテンツ視聴者を獲得する。

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アニメつながりで言うと、シンプソンズなどで有名な作者が作ってるアニメでFuturamaというのがあるのだが、アニメ中に、こんな画面が出てきて、「この後起こるシーンはどんなものか?」という問いが出てくる。たいてい、選択肢のいくつかはストーリーのつながりと関係のある選択肢だが、もう一つの選択肢はストーリーの展開と全く関係のない事(「キャラが奇声をあげる」とか)になっており、ほぼその最後の選択肢が選ばれ、コンテンツが進行する。

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“Hawaii Five-O”というドラマは、エンディングの前に、「どのようなエンディングがよいか」をファンに募集をかけた。結果、東海岸と西海岸では違うエンディングとなったため、わざわざ「二つ別のエンディング」を製作したほどだ。

2年前、AUDIがスーパーボウルコマーシャルで最初にハッシュタグを使ったそうだが、今ではどのスポンサーもそうしている。テレビ離れが叫ばれるアメリカでも、同じような悩みを抱えつつも、ドラスティックに番組作りを変えてみたり、ソーシャルのトレンドを積極的に受け入れようとしている姿勢に感心した。

ジョンへガティ卿、ダンワイデンの対談ビデオを見た。 刺激を受けた。

少し前に、今年のカンヌでの特別対談のビデオを見た。
ジョン・へガティー卿(BBH)とダン・ワイデン(W&K)の二人が話す、というものだ。

この二人、誰?という方の為に、この二人のバイオグラフィーをカンタンに記すと…。
ジョン・へガティー卿(Sir John Hegarty)…BBH共同設立者の一人。Levi’sのCMが有名。Brad Pittを起用したのは彼。
ダン・ワイデン(Dan Wieden)…W+K共同設立者の一人。Nikeの”Just Do It.”のキャッチコピーを生み出した人。

というわけで、超がつくほどのビッグネームな二人なのだ。
なんと言うか…かっこいいオヤジたちなのだ。
そして、鬼。リアル広告の鬼。
変態と呼んでも良いのかもしれない。
二人がそれぞれ自分のこれまでの仕事を振り返りながら、
語るというスタイルなのだが(二人がどんどん話をしてしまうので、モデレーターとしている司会の人がほとんど話をしていない笑)
二人の対談の中で、気になった言葉いくつか記す。

「ナイキは同じ広告を二回も出稿しない。」
「誰かに手紙を書くときに、同じ手紙を二回も送ったりしないだろう?」

「アイデア80%, エクセキューション80%」
「アイデアは始まりにすぎない。」

「never give up, keep pushing.」
「it’s all about storytelling.」

かっこ良すぎる。

興味深いのは、先日参加したワイヤードのカンファレンスと同じく、彼らもアイデアだけじゃなく、エクセキューションの重要性を強調しているところだ。

WIRED CONFERENCE 2012@Roppongi Hillsに行ってきた

ワイヤード主催のカンファレンスに行ってきた。
クリス・アンダーソンさんのトークが大変面白かったので、レポート記事にしたい。

<Who is「クリス・アンダーソン」?>
US版ワイヤード編集長(つい最近、辞任する報道が出たけど)。日本では書籍が一番有名で、

『ロングテール -「売れない商品」を宝の山に変える新戦略-』
『フリー -〈無料〉からお金を生みだす新戦略-』

などのネット系や、広告関係の人には特に知られた著作を持つ。
最近発売された著書が、『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』
今日行ってきた講演は、このMakers Movementについて取り扱うもの、と言う訳だ。

カンファレンスのページにも、詳しいプロフィールがある。

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<WIRED CONFERENCE 2012基調講演内容要旨>

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クリス・アンダーソンさんの講演は、まず、スイスからの移民であったご自身の祖父の話から始まりました。彼は、仕事の傍ら、「発明」をする事に時間をかけていたそうです。彼のそのときの発明は、「スプリンクラー」。時計の技師がおおい、スイスらしく、そのスプリンクラーにタイマーをつけ、初めて特許を取ったのがクリス・アンダーソンの祖父でした。

「特許をとって、お金ももらえて、すばらしい話じゃないか!」と周りの人は思うかもしれませんが、発明者であるクリス・アンダーソンさんの祖父は「特許」と言う物に対して、良くは思っていなかったようです。彼は、「発明」という行為を通して、自分のアイデアを具現化し、マーケットに出す事に成功しましたが、自分が発明した物が自分の手から離れてしまう事をも意味していました。彼は発明者ではあっても、起業家ではなかったのです。そんな祖父から、クリス・アンダーソンさんは「ものづくり」のいろはを学びました。機械製図の基礎から、実際にそこで起こしたアイデアをプロトタイプに落とし込むまでなど。型から、エンジンを作った事もあったそうです。

時はながれ、現代。物作りはテックショップと呼ばれる、いわゆるファブラボのようなスペースで行われるものとなりました。この物作りの変遷の動きは、当時メインフレームと呼ばれ、アクセスがきわめて限定だったコンピューティングが、パーソナルコンピューターとして人々に広く普及していった流れとよく似ています。

クリス・アンダーソンさんは続けます。「これまでの10年は新しいソーシャルとイノベーションのモデルをウェブで試す事でした。これからの10年はそれを現実世界に広げる事です。」と。

まず最初に産業革命。それは、人が持つ「物理的な力」を例えば水力や電力を使って機械に変換する事を可能にしました。その結果、少ない人間が、膨大な量の製品を作り出す事を可能としました。しかしながら、それはそれまで散らばっていた人々の住まいを工場に集約させる事となりました。そして、その工場は資本家が所有していた物です。

そして、次の産業革命。プリンターという存在(パーソナルコンピュータではない)を考えてみると、プリンターを通じて、波及力は限定的ではある物の、「知識をパブリッシングする」というそれまでできなかった事ができるようになりました。さらに、ブログの登場を経て、知識を広める事ができるようになりました。プリンターとブログは、それぞれプロトタイプのツールであり、ディストリビューションのツールであったと言う訳です。

三つ目の産業革命。つまりこれからの時代。プリンターがプロトタイプのツールであったとするならば、これからは3Dプリンターがプロトタイプのツールとなるでしょう。それに対応する、ディストリビューションのツールは、クラウドマニュファクチャリングプラットフォームの存在があげられるでしょう。ウェブが広まっていったときとおなじ構造がここでもみられるのです。

クラウドマニュファクチャリングプラットフォームの一例…

<alibaba.com>
世界最大のB2Bインターネット貿易サイト。サプライヤーとバイヤーをつなぐ。
http://www.alibaba.com/

<trademanger>
上記のalibaba.comにて、サプライヤーと連絡を取り合うためのチャットツール。やり取りされるメッセージは自動的に翻訳される。
http://trademanager.alibaba.com/

アイデアをプロトタイプし、実際に製品として作るところまで、個人でできてしまうのです。でもその後は?そこで、kickstarterなどでクラウドファンディングを行うのです。

<kickstarter.com>
http://www.kickstarter.com
クリエイティブなプロジェクトのためのクラウドファウンディングサービス。予算はないけれども、魅力的なゲームや低予算映画のプロジェクトがあるユーザーが、他のユーザーから投資を受けることができるプラットフォームです。有名なのは、pebbleというプロジェクト。68,000人以上の支援者を集め、$10,266,845(!)という金額を集めています。

クラウドファンディングがすばらしいのは、お金を借りる必要がない事です。ユーザーからの支持をベースに資金が集まるので、市場調査もかねています。(お金が集まる=マーケットがほしがっている物である、という図式が成り立ちます)また、一番すばらしいのはユーザーからの支持を集める段階で、「コミュニティ」が出来上がるという点です。ユーザーは顧客ではなくなり、参加者となるのです。

クリス・アンダーソンさんの祖父が作ったタイマー付きスプリンクラーは今の時代だったらどうなるだろうか?そんな考えをもとに、クリス・アンダーソンさんが作ったスプリンクラーが、”OpenSprinkler” ネットにつながっており、外からでもスプリンクラーをコントロールすることも可能です。APIも公開されており、手順を経れば、だれでも自分で安価に作る事ができます。クリス・アンダーソンさん自身はスプリンクラーを作った事があるわけでももちろんなく、それでもネットで関係者の力を借り、1ヶ月ほどで作り上げる事ができました。しかも、これまであったスプリンクラーより良い物が。

そのときに使ったツールですが、Autodesk 123Dというソフトがあります。

インターフェース画面をみると、PrintだったりMakeというボタンがあります。考えてみるとすごい事で、印刷する、プロトタイプを作り上げる、というのは一昔前は専門領域で、場合によってはPhdがいるような領域でした。

クリス・アンダーソンさんの娘さんたちにこんな事があったそうです:彼女たちはドールハウスで遊ぶ事が多いのですが、もっと家具を集めたりして、おもちゃのバリエーションを増やしたいと思っていました。そこで、父親であるクリス・アンダーソンさんにおねだりをして、amazonで何かいいものは無いかどうか、いろいろ探してみるのですが、たくさんのメーカーが製品を出しており、そのどれもに規格が存在する訳でもなく、自分たちのニーズに合う物が無い事がわかったそうです。そこで、クリス・アンダーソンさんたちがとった方法とは、プロの家具デザイナーがオンラインで公開している家具のCADデータを入手、それを用いて自分たちのドールハウスで合うサイズに変更し、3Dプリンターで作り出し、自分たちが望む形に塗装してそれを使う事でした。確かに既製品とは品質では勝負できないかもしれませんが、彼女たちにとってはそれで十分であり、しかも自分たちのクリエイティビティーが発露できたと感じているのです。これまでの消費活動の代替にはなりませんが、オルタナティブとしては十分機能しうるのです。

(ちなみに、Autodeskの”123D catch“と言うツールを使えば、iPhoneで撮影した対象物が自動的にデジタルモデルに変換されるというさらにすごいアプリがあります。)

ビル・ジョイというコンピュータ技術者(サンマイクロシステムの初期メンバーの一人)によるこんな話があります。

すべての知識、そしてアイデアを現実にするためのインフラがすべてネットで探し出せるこの時代、世界の名だたる企業で働くのは「優秀な人」ではなく、企業が求めるクライテリア(いい大学を卒業している、言葉が話そうとしている、など)に合致する「安全な人」であると。企業が求めるタスクに対して、企業が雇用しているのは実は「最高のスタッフ」ではない、ということです。

では、最高のスタッフとはどこにいるのか?

クリス・アンダーソンさんは、3D Roboticsという会社を経営しています。もともとは、ご自身の子供がレゴとモーターを使っておもちゃを作ろうとしているのをみて、「これが空を飛んだら面白いかもな」と思い、趣味で作った空飛ぶラジコン(DIY Drones)を製品として売り出すために作った会社です。

クリス・アンダーソンさんがこの空飛ぶラジコンのプロトタイプを作ろうと思っている事をブログで呼びかけたところ、反応したのがメキシコに住んでいるJordii Muñozという人でした。

その後彼とクリス・アンダーソンさんは、アイデアを製品に落とすため、ラジコンのプロペラを稼働するために必要なモーターをalibaba.comで中国のサプライヤーに発注し(翻訳はtrademanagerで行われる)、モックアップを作り出しました。

数年前にほんの思いつきで始まったプロジェクトは、適切なコミュニティを作ることで、自ら関与したいと思える人を世界中からあつめ、実際の企業として事業化への道を歩んでいます。

このJordii Muñozという人物ですが、クリス・アンダーソンさんにコンタクトをとったときはほんのティーンエージャーにしかすぎず、大学教育を受けた訳じゃありません。いわゆる従来の基準でいうと、決してつながる事の無かった二人です。しかし、このDIY Droneというプロジェクトにおいては彼が「最高のスタッフ」であったのです。クリス・アンダーソンさんが決して彼を求めた訳でなかなく、彼がクリス・アンダーソンさんを探し当てたのです。

ここに、新しい時代の物作りのヒントがあります。クリス・アンダーソンさんはこの3D RoboticsでフルタイムのCEOとなるために、WIREDの編集長を辞める事となりました。

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なんだか、ものづくりの動きというと、自分でもわかった気になっていたけど、それよりももっと大きな事が動いているのかなと感じた講演だった。いろいろ自分でも考えてみよう!

2012年カンヌ注目事例


今更、という感じもあるが、今年のカンヌで気になった広告事例をいくつかまとめてみた。

個人的には、「ネガティブな要素がある広告」に注目している。なぜネガティブか、と言われれば、自分がひねくれているという性格的な部分もあるかもしれないが、そこに何かしら人間の素性を示す要素があるような気がしてならないからだ。

「正義と悪」というテーマで登場人物が比較されるとき、正義(=つまり正しい事)だけの視点では何となくつまらない。負の面である「悪」が描かれてこそ、物語に深みが出る。(スターウォーズとかもそうだったし)という訳で、ネガティブな要素がキャンペーンの中にある事例を集めてみた。

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「憤怒:イライラの昇華」
“Parking Douche”

ロシアの新聞社、”Village”が展開したキャンペーン。ロシアにはびこる駐車クズども(=parking douche)を一掃するためのもの。街中で違法駐車を見つけた場合、専用のアプリを使って車のナンバーなどの情報を投稿。投稿情報をもとに、違法駐車が停められている近辺でVillageのウェブサイトを見ている閲覧者に、まるでページの閲覧をブロックするかのように、違法駐車車両が画面上に登場。邪魔な車両をどけ、再びページが閲覧できるようにするには、facebook上にてこの違法駐車車両について、「晒しあげ」をする必要がある。違法駐車がもたらす「イライラ」をうまく昇華した事例。

「喪失:〜〜がない」
“Empty Pages”

ペルーの新聞社”El Bocon”が展開したキャンペーン。この事例は、ペルー内で行われたとあるサッカーの試合において、白熱したファン同士のいざこざがもとで死亡してしまったファンの存在が契機となっている。サッカーの試合において、このような暴力沙汰が起こってしまったことへの抗議として、El Bocon紙は、キャンペーン当日のサッカーに関連する紙面をすべて白紙化。「白紙の紙面」という衝撃的な見栄面のまま、新聞を発行。ページをめくっていくと、白紙部分のあるところにメッセージが。「繰り返される暴力はフットボールを消してしまう。フットボールを守ろう。人の命を守ろう」当たり前にあると思っているものを喪失させることで、ストレスを生み出し、メッセージにフォーカスを当てることに成功している。

“Book Burning Party”

ミシガン州トロイにある公立図書館のキャンペーン。地元行政の財政状況の悪化により、いったんは閉鎖に話が進みかけてきた図書館だったが、それに反対するため、「図書館の本を燃やすパーティー」を企画。SNS上で展開。本を燃やすという好意に対して、多くのアテンションを獲得することに成功。「図書館がなくなるように投票すること=財政状況の改善」から「図書館がなくなるように投票すること=貴重な書籍を燃やすことに等しいこと」というパーセプションチェンジを実現。「図書館の本がもしなくなったら」という喪失をキャンペーンが演出することによって、メッセージを伝えることに成功している。

「仮定:もし何とかだったらどうなるか」
“The Return of Dictator Ben Ali”

チュニジアにて国民に投票を呼びかけるためのキャンペーン。長年の独裁政権を倒し、民主政治の道を歩もうとしているチュニジアの国民だったが、国内は疲弊しきっており、誰も政治にもはや興味を持っていない。そこでこのキャンペーンは、街の見晴らしのいいところに、昔の独裁者の顔写真がプリントされたOOHを展開。これを見て、独裁者が再び戻ってきたと勘違いした民衆は、怒ってこのOOHを取り外そうとする。すると、OOHがうまい具合に外れるがその下にはもう一枚、別のOOHが。「投票をしなければ、独裁者は再び戻ってくる。」というメッセージとともに、国民に政治に参加し、投票することの重要性を問いかける。「もし失脚したはずの独裁者が戻ってきたら?」という仮定を用いて、ストレスフルな状況を作り出し、コミュニケーションする事例。

「現実:みたくないかもしれないけれど」
“I have already died”

オランダでのALS(筋萎縮性側索硬化症)についての理解を普及・啓蒙、そして寄付を促すキャンペーン。ALSは進行することによって、死に至る病であるが、実際にALSとして診断された患者をキャンペーンに起用。広告物に登場する人物として、ALSに対する理解と、寄付を促すメッセージを発信する。ただ、すごいのはこの広告が出稿される時期。
掲載されるのは、広告内で登場している人物が死亡してから。広告を見た人は、今実際自分が登場人物が「既に死亡している」という現実をまざまざと突きつけられることになる。見たくない現実をあえて突きつけ、コミュニケーションする事例。

“Adoption Drive”

ペディグリーによる引き取り手のいない捨て犬の里親になることを啓蒙するニュージーランドでのキャンペーン。3D映画のシネアドとして放映される素材を2パターン用意。その際に、観客はキャンペーンのために寄付をしたか否かによって別々の3Dメガネを手渡される。寄付をした場合と寄付をしなかった場合とで、放映されるシネアドが違って見える。寄付をした人の場合は捨て犬がきちんと保護されていくというもの。寄付をしなかった人の場合は捨て犬が救われないというもの。自分の行動の結果によって、救われない(見たくない)現実を見せつけることで、コミュニケーションする事例。
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人の怒りであったり、悲しみを誘うような手法というのは、一歩間違えれば、炎上するリスクも極めて高い。このようなリスクをとろうとする広告主も、きっとそう多くはないだろう。(事実、上に上げた事例の広告主は一般企業ではなく、炎上をリスクとは捉えないNPO/NGO団体が多い。)だが、逆にここの炎上リスクについても綿密な計算が成り立つのであれば、機能するとも言い切れる。

例えば、先の独裁者の事例も、「きちんと騒ぎになるように」(これもへんな書き方だが…)その場で民衆の怒りに火をつけ、OOHをはがすという行為に至らせる為の「発火役」の人間がいたようだ。しかも、その後の媒体露出までのスムーズな移行が、キャンペーンを成功に導いたといっても過言ではない。いずれにせよ、極めて緻密な計算である。

ただの「恐怖訴求」ではなく、どのような反応になるのか、どのように炎上するのか、それがどう広がっていくのか。結果までを計算した上で、ネガティブな要素を触媒として使えば、大きなリターンをきっと得られるだろう。