日米間のエージェンシーでのアイデア出しのアプローチが違って面白かった〜その1〜


 

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しばらくぶりの更新となった。

実は仕事で、ここ数日、ニューヨークに出張に行っていた。

一緒に仕事を行っている、クリエーティブエージェンシーとの打ち合わせのためだ。

現地で、チームメンバーと共に何度かブレストを行ったのだが、そこでのアイデアの出しのプロセスが、日本のそれとは違っており、大変参考になったので、個人的に面白かったポイントをメモ代わりに書いておく。


【面白かったその1:キックオフミーティングは、営業、クリエーティブ、ストラテジー、みんなやってきて、ECDがオリエンする】

クリエーティブ開発を行うにあたり、キックオフミーティングを行うのは、もちろん日本と同じで、クリエーティブに限らず、営業やストラテジストも入るのも特段珍しい事ではないが、キックオフの説明を行うのがECDというのが、興味を引いた。

ECDが、きちんと概況の説明から、ブリーフの説明を詳細に行い、どんなアイデアを求めていて、どんなアイデアは避けるべきか、明確な指針がくだされるのだ。

また、キックオフのミーティング自体も非常に短い。説明と議論を含めて、合計1時間弱ぐらいで終わって、すぐに解散となる。

日本でも、キックオフミーティングの段階で、ECDだったり、CDが指針を示すのはもちろんだが、ECD自身がキックオフ資料を自分で作り、そしてそれを説明しているのは、いつもの日本で慣れている作業フローとはまた違った感覚を感じ、新鮮だった。

【面白かったその2:2〜3人ぐらいの細かいチームに「分解」して、アイデア出しを進める】

キックオフミーティングの際、日本とはまた違う新しいメソッドに遭遇した。

一通り、キックオフミーティングでの説明が終わった後、急に「じゃあ、今回のミニチームなんだけど…」と切り出すCD。一人で案出しをして、アイデアの持ち寄りをするのかと思っていたら(日本ではそうする事が多いと思う)、キックオフミーティングに参加している10人ぐらいをさらに2〜3人で構成される細かいチームに分解して、その中でアイデアを相談し合って、アイデアを考えろというのだ。

私が一緒に組んだのは、デザイナー、ストラテジスト、そして私、の3人だ。意図的に、役職が違う人たちとのチーム編成になっている。

バラバラなチームを「わざと」組ませてアイデア出しをさせるところに、日本との違いを感じ、面白さを感じた。

【面白かったその3:一番最初の持ち寄りの段階では、「文字」だけでアイデアを書き出す】

ここが、一番面白く感じたポイントかもしれない。アイデアの各々で考えた後、みんなで集まっていわゆる「持ち寄り」を行うのだが、このときのアイデアの持ってきかたが日本と決定的に違った。

ちなみに、日本では一枚の紙に案をまとめたものを「ペライチ」とか「一葉一案」と言ったりするが、アメリカでは”One Sheeter”と言うらしい。この言葉を知っているだけで、グローバルに明るいクリエーティブとして、通ぶれるかも?!(笑)

さて、この”One Sheeter”なのだが、文字だけでしか書かれていない。内容は、

  1. インサイト
  2. アイデアの内容
  3. それがどう機能するか

の3点が書かれているだけ。この、3点が書かれたフォーマットを事前にメンバーに配布し、持ちより参加者は、このフォーマットで書かれた案をひたすら壁に貼っていく。

私は、日本でのアイデア出しの方法論に則って、「文だけじゃ、ぜってーみんな、わかんねーだろ」とせっせと、考えた案に対して、一枚一枚ビジュアル(いわゆる「ポンチ絵」)も持っていったのだが、打ち合わせで披露される事はなかった。

なぜか。

というか、そもそもなぜ日本のアイデアの打ち合わせでは、「絵」をつけるのか。そこには、とても、「おもてなし的」な職業意識が働いているからだと思う。

つまり、案を出す側のスタッフが、聴いている側のスタッフに対して、「より分かりやすく」「より簡易に理解してもらえるよう」に、絵を付け足し、案の内容を分かってもらうために、そして、後からどのアイデアがどうだったか、分かりやすくするために絵をつけるのだ。

だが、この文字だけのOne Sheeterの場合、根幹の成り立ちから全く違う。

「わざと」案を分かりにくくしているのだ。

アイデアのコアを文字だけに限定し、ビジュアルがない状態で案を説明させる事でそのアイデアはシンプルなのかどうか、文字だけの説明でもきちんと通用するのかどうか、判別をしているのだ。

アイデアをプレゼンする際、解像度というか、粒度を合えて下げる事で、案の説明をしている段階でセレクションがある程度はじまるのだ。


 

どちらの手法が良い/悪いという事は全くなく、チームやメンバーにあう手法を適用すれば良いと思うが(参照記事:R/GAのブレスト方法)こういったアプローチの違いを知る事は、視野が広がって、大変に興味深い。

…さて。だいぶ長くなってしまったので、他に気になった事は次のエントリーとしてまとめようと思う。