SXSW 2013 レポート: “How Twitter Has Changed How We Watch TV”(Twitterはテレビ試聴をいかに変えたか) [Mar. 9]

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SXSW二日目、一番最初のセッション。SXSW公式紹介ページはここから。本当は二日目で参加したセッションをまとめてレポート書こうと思ったが、書いていたらずいぶんと長くなってしまったので、R/GAセッションのレポートと同じく、こちらも独立したポストに分ける事にした。

日本ではなじみが多いテレビとPCの「ながら試聴」。それと近い話だと思うが、ソーシャルメディアとテレビコンテンツの相性についてがメイントピック。講師はジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)。ソーシャルメディア関連の会社を自分で起こしたり、博士号を関連する分野で取得しているなど、ソーシャルメディアに関しての専門家だ。

自分はたまたまラッキーだったが、あとで人から聞くとセッションに入れない人がいっぱいいて、会場の出口に急遽同時中継のテレビが設置され、それに聞き入る人だかりができる、という事態になったようだ…。

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会場の外に出来上がる人だかり(by他のSXSW参加者写真)。SXSWでは、人気のあるセッションは最低でも30分前に到着するのが鉄則!(逆に入れなかったときのがっかり感は凄まじい。)

ジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)氏プロフィール…
Union Metricsの共同設立者およびCOO(Chief Customer Officer)。Organizational Communication and TechnologyでのPhDを取得。

R/GAセッションと同じく、すばらしい事にスライドがここから閲覧可能になっている。

セッション中から気になった発言や考え方をピックアップした。

「テレビコンテンツの配信設計とソーシャルメディアの関係性」
ジェン氏が言うには、コンテンツの配信の仕方によってテレビ番組がO.A.されているときに巻き起こるtweetのパターンが変わるらしい。

【”On-going Series”(継続型)】
いわゆる普通のテレビコンテンツ(ドラマ)の配信の仕方。毎週決まった時間に配信。
このタイプで一番のツイート量を稼ぐのは”Pretty Little Liars”。自分は見た事ないが、大人気ドラマシリーズらしい。

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ワンシーンで最大30,000ツイート叩きだすらしい。

このパターンで、大きなツイートを稼ぎだす番組の他には…

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“The Walking Dead” であったり、

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“American Idol”や、

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“X Factor”などの、オーディション番組がなかなか良いツイート量を稼ぎだすらしい。O.A.されている時に起こっていることが視聴者にとってツイートする重要なネタになる。

【”On-going Series Finale”(継続フィナーレ型)】
先ほどのパターンの派生形。継続型のツイートは、フィナーレ(最終回)を迎えるときに、ツイート量が頂点に達する。逆説的だが、最終回に達する前でも、ツイート量を観測する事で、そのコンテンツが成功しているかどうかある程度わかってしまう。

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例えば、先ほど挙げた “Pretty Little Liars”と”Terra Nova”(スピルバーグ製作のドラマだったが、コケて製作中止に…)だが、どちらも全国規模でのO.A.にもかかわらず、”Pretty Little Liars”が 2時間で90,000ツイートを生み出すのに対し、”Terra Nova”は同じツイート量に到達するまで2週間はかかるとの事…。受けるコンテンツとそうじゃないコンテンツの差が如実に出てしまうのだ。視聴率なんかより、遥かにリアルな数字である。

【”One-time Events”(一発イベント型)】
スーパーボウルなどのイベントがこれに当たる。イベント当日にツイート量の爆発的な伸びが観測される。最近あったオレオのスーパーボル広告ツイートはこのタイプのコンテンツの時間的特性をよく生かした施策と言えるだろう。「結果が予測できない」というのがツイートを生む大きなモチベーションとなる。

【”Streaming All-at-Once”(一度にすべて配信型)】
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“House of Cards”というドラマが引き合いに出されていた。2シーズン分のコンテンツ制作に約100〜200万ドルをかけたこのドラマ。配信権を獲得したのは既存のテレビ局ではなく、なんとNetflix。ネット経由でのコンテンツを配信する事になった。テレビと違って、配信の方法に縛られる事がないのが利点だが、このコンテンツに関しては、隔週という形ではなくとある金曜日に2シーズン分「まとめて」アップロードする事にした。その後のツイート量を調べてみると、これまでのパターンとは明らかに違い、配信直後から伸びたツイートが緩やかに減少していく、という傾向を見せた。

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先ほど挙げた4つのツイートパターンの変化まとめ。

コンテンツ一つとっても、配信の仕方でソーシャルでの広がり方が全く違うのだ。

「ツイッターを介したインタラクティブなコンテンツの作り方」
コンテンツの配信の仕方だけでなく、作り方にも留意すべき点はたくさんある。

【ユーザーとともにコンテンツ作る】
たとえばゴールデングローブ賞の中継。ゴールデングローブ賞オフィシャルのツイッターアカウントがあるのだが、O.A.中に、「授賞式会場に来ているセレブリティでだれの写真を撮ってきてほしいか?」というアンケートを実施。

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結果、アデルが一番投票され、実際にその様子を撮影し、アップ。実際にイベントが起きている時間をユーザーと共有している共時性を利用、コンテンツを作り出す好例。

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こんな興味深い事例も。Archerというコメディーアニメがあるのだが、

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キャラクターにそれぞれツイッターアカウントが存在する。ユーザーがキャラに絡むときちんと返事が来る。面白いのは、アニメの声優が実際にアカウントの運営をしているところだ。コンテンツが好きなツイッターユーザーならきっと絡むだろう。その絡みがまたツイッター上で広がり、新たなコンテンツ視聴者を獲得する。

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アニメつながりで言うと、シンプソンズなどで有名な作者が作ってるアニメでFuturamaというのがあるのだが、アニメ中に、こんな画面が出てきて、「この後起こるシーンはどんなものか?」という問いが出てくる。たいてい、選択肢のいくつかはストーリーのつながりと関係のある選択肢だが、もう一つの選択肢はストーリーの展開と全く関係のない事(「キャラが奇声をあげる」とか)になっており、ほぼその最後の選択肢が選ばれ、コンテンツが進行する。

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“Hawaii Five-O”というドラマは、エンディングの前に、「どのようなエンディングがよいか」をファンに募集をかけた。結果、東海岸と西海岸では違うエンディングとなったため、わざわざ「二つ別のエンディング」を製作したほどだ。

2年前、AUDIがスーパーボウルコマーシャルで最初にハッシュタグを使ったそうだが、今ではどのスポンサーもそうしている。テレビ離れが叫ばれるアメリカでも、同じような悩みを抱えつつも、ドラスティックに番組作りを変えてみたり、ソーシャルのトレンドを積極的に受け入れようとしている姿勢に感心した。