3月気になったトピック:”Agic”

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東大の研究室から飛び出したベンチャー企業。普通のプリンターで、回路図が印刷できる、というもの。
自分もキックスターターでプレッジした。これがあれば、ブレッドボードを使わずに、インクジェットで、基板印刷が出来てしまう。

キックスターターで、資金を集め、SXSWにてお披露目。海外のテック系メディアに取り上げられ、どんどん耳目が集まる。スピード感重視。現代的なビジネスのやりかたな気がする。資本主義経済の中でのし上がっていくのに、枠組みを気にする必要は無い、実は自由なのだ、と改めて気付かされた。

3月気になったトピック:”HUVr”

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ここ最近、とりわけ3月の間で自分的にメモしたものや気になった事例をリスト化してまとめてみる。ソーシャル上でいろいろなネタが回ってくるが、すぐに消費されてしまい、振り返ることが無くなってしまうので、書き留めておくのは大事だと思う。日記のようなものでもあるのかも知れない。

【HUVr】
まずはこのサイトで、動画を見ていただこう。

バックトゥーザーフューチャーファンなら落涙ものである。
クリストファーロイドの最初のナレーションから私は泣いた。
Nikeが2015年にパワーレース付きの靴を発売する、という事で話題になっていたが、もう片方の未来がついにここに来たと。

まぁ、全部嘘なんだけどね。

そう、これ、すべて嘘なのである。(冷静に考えればそりゃそうだと思うが)
あたかも、どこかのスタートアップが作ったかのような見せ方になっているが、実際に地面から浮くスケボーなどあるはずが無い。

が、面白いのは、嘘だともちろんわかっていても、どっちにせよ話題になることだ。

で、嘘なので、炎上するのだが、ちゃっかり動画をまたリリースして、クリストファーロイドがネタバラしをしつつ、お詫びしている。

なんというか、お詫びするもエンターテインメントになっている。
クリストファーロイドに謝られちゃ、もう誰も何も言えないし、なぜか一瞬でもだまされそうになった事が、心地よい経験として残っている。

Onlab Growth Hack Conference2013に行って来たので、そのレポート

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ちょっと、若干曖昧なところもあるが、後学の為に、自分が見聞きした事で、メモした事を余さず書き記す。

Open Network Labが主催する、「グロースハックカンファレンス」に行って来た。

シリコンバレー・日本で最先端のグロースハッカーが集結!Onlab [Growth] Hackers Conference 2013

ここ最近、語られる事が多くなって来た「グロースハック」について、国内外からスピーカーを招き、自らの経験をもとにそれぞれがグロースとは何か語る。

スピーカーはこの5人。
・Sean Ellis氏
・Gustaf Alstromer氏
・古川 健介氏
・Ilya Lichtenstein氏
・松本 龍祐氏

今回のポストでは、そのうちの二人を見ていくとしよう。

スピーカー一人目:
Sean Ellis -Qualaroo社CEO-

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Qualaroo社CEO。Qualarooとは、ウェブサイトへの訪問者の動向を分析し、彼らの行動に影響を与えることで顧客との繋がりを強化するマーケティングツールである。Qualaroo以前には、Sean氏はLogMelnとUproarにてローンチからナスダックへのIPOまでを行い、Dropbox、Lookout、Xobniを市場へ送り出すことを指示した。また、Eventbrite、Socialcast、Webs、 World Golf Tour、Wordpress.com、Songkickといったサービスの成長を加速させた。

ちなみに、Growthhackという言葉を作った人。

「グロースハック」という言葉を作った本人がわざわざ来てくれるんだから、千人力だ。

後ほど、直接お話しして、いろいろ相談したりしたが、フランクですごく良い方だった。

じつは、ちょっとだけ冒頭聞き逃してしまったのだが、印象に残ったのが、下記スライドで説明していた概念。

グロースハックの段階

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そもそも、「グロースハック」とは、どの段階で語られるべきものか?このスライドをみるとわかるが、”Growth Transition ” “Scale Growth” の前に”Product/Market Fit”という土台の所がある。

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“Product/Market Fit”とは、Sean曰く、そのプロダクトが特定の人にとって「無くてはならないものになっている」状態の事を指す。
この”Product/Market Fit”が到達している段階でこそ、グロースは意味があるとSean Ellis氏は説く。

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では、Product/Market Fit(PFM)はどのようにして図るか?
ユーザーに直接、「このプロダクトがもう二度と使えなくなるとしたら、どう思いますか?」と聞いてみるのである。
この質問に対して、ターゲットグループが40%であれば、次のステージ(つまりグロースへの第一歩)に行くサインだと言う訳だ。
※ターゲットグループの40%と言うところに注意。すべてのユーザーである必要は無い。サービスのターゲットにしたいユーザーで良い。この段階に到達する前に、グロースを目指すのは、もったいないし、危険でさえある。※二人目のスピーカーである、Gusutaf Alstromer氏は、Gmailの開発者の”Hundred Happy Users”(100人の幸福なユーザー)という言葉を紹介しており、これがまさにPMFに到達する事と同義だと思う。

“Network Effect Exception”
また、”Network Effect Exception”という話もあった。
「グロース」の対象が、すべてがすべて、顧客基盤の拡大、と言う訳ではないと言う事だ。

Network Effectがかかるプロダクトとそうじゃないプロダクトがある。

Network Effectがかかるプロダクト。:ユーザーが増えるたびにプロダクトの価値が高まる。Facebook, Skype, Ebayなどが好例。

そうじゃないプロダクト: ユーザー数の増減がプロダクトの本質的価値にあまり影響を与えない。Apple iPad, Evernoteなどがそうである。

ネットワークエフェクトがかからないプロダクトに関しては、違う観点からのグロース、を考えるべき。つまり、ユーザーエクスペリエンスの向上がグロースの主目的になるだろう。

グロースの為の社内の文化はいかにして、作るか?
Sean Ellis氏が繰り返し主張していたのは、数字。グロースという素地をチームの中に作るには、まず「データを見る」という文化から始める事。そして、グロースハックは特定の人だけのものでなく、チームすべての人のものだということも強調していた。Sean Ellis氏の後のスピーカーでもあったGustaf Alstronomer氏も言っていたが、Airbnbのグロースチームはエンジニア、デザイナーのチームで構成される。今回の講演の中ででた話ではないが、Sean Ellis氏のブログを読むと、グロースのチーム内に、手を動かせる人間の存在(例えばエンジニア)は重要である、と語っていた。グロースは、誰かがやっているから、自分には関係ない、ではなくチームの中に空気のように存在すべきで、すべてのチーム員はデータ・オリエンテッドであるべきなのだ。

また、当然ながらデータを漫然と眺めているだけでも不十分だ。データがそろった後は、「好奇心」から始まる。なぜ、この事象が起こっているのか?原因はなんだろうか?十分なデータと十分な好奇心がクリエーティビティを生む。

また、顧客にたくさん話を聞く事も、グロースを行う上での有用性の高さを挙げていた。例えば、Sean Ellis氏曰く、Airbnbはローンチする前に、クレイグリストのユーザーに繰り返し話を聞き、マーケットは既に存在している事の自信を客観的な裏づけと共に深めていった。余談だが、Airbnbの立ち上げ当初、Craigslistでポストをして顧客獲得をやりまくっていたが、Craigslis側が”airbnb.com”の文字列を含む投稿をできなくしたらしい…。マーケットプレイスを使い倒すと言う意味では、前述のクリエーティビティにあふれる手法でもあると思う。

ブランド認知よりも、ブランド経験を優先せよ。
グロースをする上で、ブランド経験をしたかどうか?と言うことにも重きを置いていた。先ほど、「ユーザーに話をたくさん話を聞く」と書いたが、これはブランド体験をした人(すくなくとも2回以上)に対して行う方がいいらしい。考えてみるとたしかにその通りで、グロースをしたいのであれば、プロダクトについてよくわかっているユーザー、使っているユーザーから意見を聞くべきで、そうなるとブランドを体験した人、と言う事になる。PMFに到達するという話もそうだし、100人の幸福なユーザーを作る、という話もこことつながる。満足度の高いユーザーからの意見は金言なのである。(KPIもユーザーにしてほしい体験、を念頭に置き、設計すべきである。)

スピーカー二人目:

お次はこの方。

Gustaf Alstromer Airbnb社 Product Manager, Growth

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Airbnbのグロースにおけるプロダクトマネージャー。Airbnb以前には、2007年よりモバイルのウェブコミュニティ及び100万人以上のユーザーを持つインスタントメッセージサービスを行うHeysanを共同創設者し、CEO、製品開発を専門としていた。HeysanはY Combinatorのプログラムへも参加している。その後、eBuddyというインスタントメッセージングサービスにてプロダクトマネージャー、Voxerというトランシーバーアプリケーションにおいて、グロースチームの統括を行った。

今回のグロースハックカンファレンスには残念ながら、フィジカルには参加できず、Skype経由での参加となった。講演後、Twitterで質問したら、快く答えてくれた。いい兄ちゃんだった。

ちなみに、Voxerを開発しているときは、Twitterとオフィスをシェアしていたらしい。

講演の中から、拾って来た発言を列挙します。(ほんとはプレゼン資料貰えれば良いのだが、貰えなかった…。)

(以下、講演メモ)
—————-
・週ごとのグロースのレートの違いは、後々、大きな違いをもたらす。例えば、週ごとの成長率が3つあったとして、それぞれ、1% 3% 10%賭した場合、10週間後、信じられない量での違いを見る事になるだろう。(借金が複利で増えていく事を考えると、これはよくわかる。)

・よって、グロースレートを把握する事が重要。グロースレートと時間の経過。

・では、グロースレートの改善とは?それは、「ユーザーがした経験の数」×「経験ごとの改善」としてシンプルに表せられる。

・プロダクトかグロースか?どちらに集中すべきか。

・「多くの会社はグロースをすべきだと思い込みがちであるが、実際は、プロダクトの改善の方が重要だったりする場合もある。」

・では、いつグロースに集中すべきか?

・そのプロダクトは、ユーザーがたくさんんいる事によって向上するのかどうか?例えばAirbnb, Voxer, Twitter, Facebookなどはそうである。だが、Evernoteなどのプロダクトだとそれは違う。シングルユーザーのユースケースが想定されるからである。Evernoteのようなプロダクトであれば、プロダクトの向上にリソースを割くべきである。

・グロースに集中したいのであれば、マーケットで「受け入れられている」ことが前提となる。※Ellis氏のPMFと同じである。

・Airbnbのグロースチームは11人いる。それぞれ、デザイナーやエンジニアである。

・どのような人間をグロースチームとすべきか?
   ー好奇心が旺盛で、データとユーザーについて、好奇心を追求できる人。
   ーすべての立脚点をデータによって示せる人。
   ー人間の心理をよく理解している人。

・ Airbnbチームが使っているグロース用ツール。
ーMixpanel (A/Bテスト用)
    ーOptimizely (A/Bテスト用)
ーGoogle Analytics
    ーYoz.io (モバイルのネイティブアプリ用)
    ー特製ダッシュボード(内製)

・ここから、Voxerの事例にうつる。Voxerは無線のようなコミュニケーションツールとして機能する。グロースの考え方はVoxerにどのように寄与したか?

・もともと、「コミュニケーションツール」と言うカテゴリーから行くと、VoxerはHeytell, Tiki, blip.me,や Talkboxなどのグロースレートが大変高い競合が既にいた。

・その中で、Voxerが伸びる可能性があったのは、SMSでのInvite送信であったり、友人のマッチングする際に置ける。ユーザーのアクティベーションのフェーズだった。

・Voxerには、ユーザーがアプリをダウンロードし、立ち上げた際に、いくつかのフィールドを使って友人関係のマッチングを行い、アクティベーションを行う。Facebook ID/ 電話番号 / Emailの情報であったり、FB ソーシャルグラフ / アドレス帳における友人関係の情報だ。

・プロセスはこうだ。
①Email、電話番号、Facebook IDを介した、自動マッチング作業。
②そこから抽出した友人に対してのプッシュ通知。
③アクティベーション → 最初のユーザー体験へとつながる。
ここでの数字のすべてを、mix panelで把握した。

・どの画面を何パーセントがタップしたか。何パーセントが送信ボタンを押したか。その数値を見ながら、「バイラル係数」を算出。

・グロースの為に、すべてのステップを数値化した。(すべての数値を見ろ、と言う事ではない。)

・このVoxerが「全米1ユーザー数が伸びているアプリ」になるまでの流れが興味深いと思う。

・それまで、iPhone版しかなかったアプリだが、2011/11/1にAndroid版をリリース。

・2011/11/29 1日250,000+Userが増える様になる。

・2012/12/6に全米1ユーザー数が伸びているアプリとしてメディアに取り上げられる。

・Android版出しただけでそんなユーザー数が伸びるのか?

・Androidだと、ユーザーパーミッションの取り方がiPhoneとは違うので、かなり別のユーザーエクスペリエンスを提供できる。

・それが結果として、iPhone版ユーザーにも波及し、驚異的なグロースをたたき出す結果になった。

・メディアに取り上げられるなど、アーンドメディアの効果はありつつも、基本的には広告に関して、$0の費用投下だった。すべて、オーガニックでバイラルに伸びた数字だった。

・100人のプロダクトを愛してやまない人がいない限り、大規模な人集めにお金を投下すべきではないと思う。
—————-
(講演メモ終わり)

今回のエントリーはとりあえず、ここまで。

(あぁ、でもホントブログ書くのって苦手…。気が向いたら、もう少し推敲します。)

SXSW 2013 レポート [Mar. 9]

二日目。前日の反省を生かし、「ホテルから会場へ到着すること」を最優先に考える。手段をえらばず、まわりの人間とコミュニケーションをとり、移動方法を模索した結果、ボストンからのインタラクティブプロデューサーが既にタクシーを手配しているとの事だったので、これに同乗させてもらい、無事会場入り。一日目とは打ってかわり、この日はフルで活動できた日となった。書く内容も盛りだくさんだ。以下は二日目に参加したセッションの内容。

<Conversation with Danny Boyle(ダニー・ボイルとの対話)>

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セッションの冒頭には、ダニー・ボイル監督の最新作”Trance”のトレイラー上映も行われた。

「トレインスポッティング」「127時間」「スラムドッグ・ミリオネア」で有名なダニー・ボイル監督(Danny Boyle)をNew York Timesのコラムニスト,デービッド・カー(David Carr)が迎え、インタビューを行った。

ダニー・ボイル氏プロフィール…
1956年イギリス、マンチェスター生まれ。スコットランドを舞台にした『シャロウ・グレイヴ』(95)、『トレイン・スポッティング』(96)でユースカルチャーの鼓動を捉え、英映画界を覚醒、全世界的衝撃を与える。その後、ハリウッド映画『普通じゃない』『ザ・ビーチ』を監督。イギリスに戻り『28日後…』『ミリオンズ』で、独自の映像感覚が復活。『サンシャイン2057』では、真田広之を起用。

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※中央がダニー・ボイル監督。左がデービッド・カー。右は、ダニー・ボイルとよく組む音楽監督。

デービッド・カー氏プロフィール…
アメリカのジャーナリスト。ミネソタ州ミネアポリス出身。New York Timesのメディア/カルチャー欄執筆を担当。アンドリュー・ロッシ監督のドキュメンタリー映画”Page One: Inside the New York Times”にて頻繁に登場する。

特にテーマがあった訳ではないが、いくつか気になった会話や発言があったので、抜き出してみる。

「ユアン・マクレガーはただの人だった」…
映画”Shallow Grave”で登場するユアン・マクレガー。当時はまだまだ全然無名の俳優だったにも関わらず、オーディションで一目見たときから、「あ、こいつはいけるな」と思ったらしい。ダニー・ボイルの審美眼が優れているのか、ユアン・マクレガーが輝いているのかどちらかわからないけれども、才能が才能を見つけるプロセスというのはいつもミステリアスで同時にすばらしいと思う。

「やってはいけないことをやってしまうところに、うまく行く勝算がある。(バックアップは必要だけど)」…
“Shallow Grave”を撮影しているとき、ワンカットでつなげる手法が常套とされる場面において、意図的にカットを切りまくる事で違う効果が表現できる事を「発見」。データサイエンティストののネイト・シルバー(Nate Silver)も言っていたけど、誰もやった事がない事にトライする事が何かしらの発見や成功につながる第一歩なんだなとこの発言を振り返って、しみじみと感じた。

「It was not my cup of tea」…
2012ロンドンオリンピック開会式の芸術監督だったダニー・ボイル。その時の仕事を評価され、なんとナイト称号の授与を打診されるも、”It was not my cup of tea!”(私が貰うようなものではないね!)と言って断ってしまったらしい。あんまり評価を気にしないところがかっこいい。サー・ボイルも十分かっこいいと思うけれども。

<How Twitter Has Changed How We Watch TV(Twitterはテレビ試聴をいかに変えたか)>
今更ツイッター?と思われるかもしれないが、ツイッターとテレビの「今だからこそ」見えてくる関係性についてのセッション。大変示唆に富んだ内容だった。詳細はこちらから

<Brainstorming Technology First(テクノロジーをまず最初にブレストする)>
R/GAによる、新しいブレストの手法!すばらしいセッションだった。詳細はこちらから

<お昼休み:Agency Meetup デジタルクリエーティブの為の就職フェア>
おい、また就職フェアかよ!と突っ込みを受けそうだが、別に転職したい訳じゃなくて、アメリカの労働市場をよりよく理解する上で、アメリカの会社の採用担当の人と実際に話をしてみたいと思って…ごにょごにょ…まぁ、とにかくせっかくの機会だったので話をしにいってみました!上に挙げたR/GAも担当者が来ていたので、どういう人材を採ろうとしているのか、その「感じ」も見たかった。

<Keynote Elon Mask x Chris Anderson(イーロン・マスク×クリス・アンダーソン対談)>

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ペイパルを創業し、次に電気自動車のテスラモータースを創業し、そしてさらには宇宙を目指し火星への有人着陸を目指すロケット製造企業、spaceXを創業するという、おそらく「アイロン・マン」に出てくるトニー・スタークの現実版みたいなトンデモナイ人がメイカームーブメント提唱者のクリス・アンダーソンと対談するという、超ビッグなキーノートセッション!

と、ここまで書いておきながら、恥ずかしいことに、私はこの対談に参加するまでイーロン・マスクの事をこれまで知らなかった…。こういうセッションに参加できるとSXSWに来てよかったと本当に思う。

イーロン・マスク氏プロフィール…
南アフリカ共和国・プレトリア出身のアメリカの起業家。SpaceX社の共同設立者およびCEOである。PayPal社の前身であるX.com社を1999年に設立した人物でもある。すごすぎて、思わず「私はあなたの爪の垢ほどの価値もございません」「生まれてきてごめんなさい、毎日無為に生きていてごめんなさい」というフレーズが口をついて出そうになる。

クリス・アンダーソン氏プロフィール…
ご存知「メーカー・ムーブメント」の提唱者。元ワイヤード編集長、現在は3D Robotics社CEO。

イーロン・マスクは現在、SpaceX社のCEOとして、火星への有人飛行を民間企業として(冗談抜きで)実現しようとしている。途方もない。対談の冒頭に、クリス・アンダーソンから「テキサスに来たのはこのSXSWだけじゃないですよね?」と話をふられ、「SXSW以外にも、テキサスの政治家と会談をもち、ロケット基地を作れないかどうか探りに来たのです。」と答えるイーロン・マスク。「赤道に近いところがベストロケーション」らしい。普通の社長じゃない。「2016年ぐらいには実際に建設したい」らしい。

そして、次にこんなビデオを見せてくれた。SXSWで世界初公開するビデオらしい。

なんと、ロケットが発射され、空中にしばらくそのまま滞空し、そのまま戻ってくるという今までに見た事ない離れ業をやってのけるのだ!この「駐車」ならぬ、「駐ロケット」動画に会場は大興奮!なぜこのようなロケットの開発を進めているのか?という問いに対して、イーロンは「ロケットの再利用性の重要性」について指摘する。コスト的にも、倫理的にも、ロケットを使い捨てにしない、というのはロジックが成立、というわけけだ。この概念が進むと、いずれは宇宙エレベーターに行き着くのだろう。それまで、ロケットというのは「使い捨て」というのが常識だったと思うが、その常識を覆すべく、未来から現在を逆算し、着実に歩を進める姿勢はすばらしいと思う。「成功の度に、少しずつ、遠かった目標に近づきたいんだ」とイーロン。

また、「なぜSpaceX社を創業したのか?火星への有人飛行ができると思った理由は?」というクリスからの質問に対しては、「NASAが未だに誰も火星に人を送り込めてない事にがっかりしたんです!火星に人類が行く、という事に人々がもっとエキサイトすることで、予算も増えるはずです。できるかできないかより、やるかやらないかと言う問題だと思ったのです。」とのこと。その為には、手段を選ぶ事なく、ロシアから弾道ミサイルを購入しようとした事もあったらしい…。(弾道ミサイルを買うって、どういう交渉ルートで買うのか全く想像もつかないけど…)

次は、イーロンの私生活について。これだけのスーパーマンっぷりを発揮しながらも、実は子供が5人もいるらしい。子育てをしながらメールを読んで返信したり、かなりのマルチタスカーのようだ。ただ、他のイーロン・マスクの記事にも書いてあったが、相当なハードワーカーらしい。

<Muppets to Mastery: UX Principles from Jim Henson(マペットから熟達へ:ジム・ヘンソンに学ぶUXの原理)>

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ラス・アンガー・(Russ Unger)氏プロフィール…

ちなみに、ここにプレゼン資料がアップされている。

UXデザイナーの語るUX/UI論。普通のUXトークと違うのは、セサミストリートでおなじみ「マペット」の制作者ジム・ヘンソンの仕事を引き合いに出して、UX/UI論を展開するところだ。ジム・ヘンソンは、マペット制作を通じ、ハックやプロトタイピング、ビジュアルシンキングを実践した。

この話を聞いていて思うのは、「ハック」だとか、「リーン」だとか、「アジャイル」という現在のUX/UI開発の主流を占める手法論が、ごくごく当たり前の事で、パソコンはおろか、インターネットというものが発明される以前から当たり前のように実践されて来ていた、という事実だ。ラスのセッションはマペット制作者のジム・ヘンソンが主題だったが、彼だけが特別だった訳ではないと思う。きっと、もの作りにたずさわる人の間では、言語化されていないにせよ、通底していたメンタリティーだったのではとこの講義を聴いて思った。

<What’s so funny about innovation(イノベーションの何が面白いって?)>

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もともとコメディアンだったバラトゥンデ・サーストン(Baratunde Thurston)が「笑い」の要素を紐解き、イノベーションと何が似ているか?についてポール・ヴァレリオ(Paul Velrio)と語り合うセッションだった。ポール・ヴァレリオがまじめ係、バラトゥンデ・サーストンがおどけ係という役割分担で話が進んだ。

ポール・ヴァレリオ氏プロフィール…
サンフランシスコにあるデザインコンサルティング会社Methodにて、ストラテジーを担当。複数のブランドをクライアントとして担当。

バラトゥンデ・サーストン氏プロフィール…
コメディアンでありつつも、ビジネスパーソン。Cultivated Witの設立者およびCEO。MITメディアラボフェローでもある。声はでかいが、話し方が知的なあんちゃん。

以下はセッション中に取ったメモ:


01:オーディエンスを知れ。そして、彼らに耳を傾けない。
「笑い」において、観客を知る事は重要。だが、観客に何が面白いか?を聞きすぎるのはあまり助けにならない。それよりかは、まず「自分」というフィルターを通してみて面白いかどうか?を判断しなければならない。その後は観客に合わせて多少のアジャストをする。観客が何を知っているかを知っている事が重要だ。

02:データはインサイトの代用にはならない。
データのリサーチをたくさんする事でインサイトは生まれない。

03:常に新鮮であれ。
「笑い」においても、同じギャグを何回も言い続けるのは飽きてしまう。時々何か新しいものを入れこまないと行けない。温故知新という手法もある。

04:自分なりの視点を持とう。
レイトナイトショーを見ると、どの司会者も同じ時事問題を扱っているときがあるが、それぞれ微妙に違う。自分の視点があるからだ。自分自身の考えを公にする事のできるツールがたくさんある今、自分の視座と言うものが自分自身をユニークたらしめる唯一のものだ。よって、自分自身の事を良く知るのが大事。

05:みんなに受けようとは思わない事。
笑いにおいても、市場においても、100%のシェアというものは存在しない。

これで、とりあえず二日目は終了。講義を聴きまくり、新しい価値観にたくさん触れた。テンションがあがる。

SXSW 2013 レポート: “How Twitter Has Changed How We Watch TV”(Twitterはテレビ試聴をいかに変えたか) [Mar. 9]

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SXSW二日目、一番最初のセッション。SXSW公式紹介ページはここから。本当は二日目で参加したセッションをまとめてレポート書こうと思ったが、書いていたらずいぶんと長くなってしまったので、R/GAセッションのレポートと同じく、こちらも独立したポストに分ける事にした。

日本ではなじみが多いテレビとPCの「ながら試聴」。それと近い話だと思うが、ソーシャルメディアとテレビコンテンツの相性についてがメイントピック。講師はジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)。ソーシャルメディア関連の会社を自分で起こしたり、博士号を関連する分野で取得しているなど、ソーシャルメディアに関しての専門家だ。

自分はたまたまラッキーだったが、あとで人から聞くとセッションに入れない人がいっぱいいて、会場の出口に急遽同時中継のテレビが設置され、それに聞き入る人だかりができる、という事態になったようだ…。

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会場の外に出来上がる人だかり(by他のSXSW参加者写真)。SXSWでは、人気のあるセッションは最低でも30分前に到着するのが鉄則!(逆に入れなかったときのがっかり感は凄まじい。)

ジェン・ディーリング・デイビス(Jenn Deering Davis)氏プロフィール…
Union Metricsの共同設立者およびCOO(Chief Customer Officer)。Organizational Communication and TechnologyでのPhDを取得。

R/GAセッションと同じく、すばらしい事にスライドがここから閲覧可能になっている。

セッション中から気になった発言や考え方をピックアップした。

「テレビコンテンツの配信設計とソーシャルメディアの関係性」
ジェン氏が言うには、コンテンツの配信の仕方によってテレビ番組がO.A.されているときに巻き起こるtweetのパターンが変わるらしい。

【”On-going Series”(継続型)】
いわゆる普通のテレビコンテンツ(ドラマ)の配信の仕方。毎週決まった時間に配信。
このタイプで一番のツイート量を稼ぐのは”Pretty Little Liars”。自分は見た事ないが、大人気ドラマシリーズらしい。

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ワンシーンで最大30,000ツイート叩きだすらしい。

このパターンで、大きなツイートを稼ぎだす番組の他には…

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“The Walking Dead” であったり、

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“American Idol”や、

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“X Factor”などの、オーディション番組がなかなか良いツイート量を稼ぎだすらしい。O.A.されている時に起こっていることが視聴者にとってツイートする重要なネタになる。

【”On-going Series Finale”(継続フィナーレ型)】
先ほどのパターンの派生形。継続型のツイートは、フィナーレ(最終回)を迎えるときに、ツイート量が頂点に達する。逆説的だが、最終回に達する前でも、ツイート量を観測する事で、そのコンテンツが成功しているかどうかある程度わかってしまう。

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例えば、先ほど挙げた “Pretty Little Liars”と”Terra Nova”(スピルバーグ製作のドラマだったが、コケて製作中止に…)だが、どちらも全国規模でのO.A.にもかかわらず、”Pretty Little Liars”が 2時間で90,000ツイートを生み出すのに対し、”Terra Nova”は同じツイート量に到達するまで2週間はかかるとの事…。受けるコンテンツとそうじゃないコンテンツの差が如実に出てしまうのだ。視聴率なんかより、遥かにリアルな数字である。

【”One-time Events”(一発イベント型)】
スーパーボウルなどのイベントがこれに当たる。イベント当日にツイート量の爆発的な伸びが観測される。最近あったオレオのスーパーボル広告ツイートはこのタイプのコンテンツの時間的特性をよく生かした施策と言えるだろう。「結果が予測できない」というのがツイートを生む大きなモチベーションとなる。

【”Streaming All-at-Once”(一度にすべて配信型)】
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“House of Cards”というドラマが引き合いに出されていた。2シーズン分のコンテンツ制作に約100〜200万ドルをかけたこのドラマ。配信権を獲得したのは既存のテレビ局ではなく、なんとNetflix。ネット経由でのコンテンツを配信する事になった。テレビと違って、配信の方法に縛られる事がないのが利点だが、このコンテンツに関しては、隔週という形ではなくとある金曜日に2シーズン分「まとめて」アップロードする事にした。その後のツイート量を調べてみると、これまでのパターンとは明らかに違い、配信直後から伸びたツイートが緩やかに減少していく、という傾向を見せた。

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先ほど挙げた4つのツイートパターンの変化まとめ。

コンテンツ一つとっても、配信の仕方でソーシャルでの広がり方が全く違うのだ。

「ツイッターを介したインタラクティブなコンテンツの作り方」
コンテンツの配信の仕方だけでなく、作り方にも留意すべき点はたくさんある。

【ユーザーとともにコンテンツ作る】
たとえばゴールデングローブ賞の中継。ゴールデングローブ賞オフィシャルのツイッターアカウントがあるのだが、O.A.中に、「授賞式会場に来ているセレブリティでだれの写真を撮ってきてほしいか?」というアンケートを実施。

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結果、アデルが一番投票され、実際にその様子を撮影し、アップ。実際にイベントが起きている時間をユーザーと共有している共時性を利用、コンテンツを作り出す好例。

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こんな興味深い事例も。Archerというコメディーアニメがあるのだが、

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キャラクターにそれぞれツイッターアカウントが存在する。ユーザーがキャラに絡むときちんと返事が来る。面白いのは、アニメの声優が実際にアカウントの運営をしているところだ。コンテンツが好きなツイッターユーザーならきっと絡むだろう。その絡みがまたツイッター上で広がり、新たなコンテンツ視聴者を獲得する。

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アニメつながりで言うと、シンプソンズなどで有名な作者が作ってるアニメでFuturamaというのがあるのだが、アニメ中に、こんな画面が出てきて、「この後起こるシーンはどんなものか?」という問いが出てくる。たいてい、選択肢のいくつかはストーリーのつながりと関係のある選択肢だが、もう一つの選択肢はストーリーの展開と全く関係のない事(「キャラが奇声をあげる」とか)になっており、ほぼその最後の選択肢が選ばれ、コンテンツが進行する。

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“Hawaii Five-O”というドラマは、エンディングの前に、「どのようなエンディングがよいか」をファンに募集をかけた。結果、東海岸と西海岸では違うエンディングとなったため、わざわざ「二つ別のエンディング」を製作したほどだ。

2年前、AUDIがスーパーボウルコマーシャルで最初にハッシュタグを使ったそうだが、今ではどのスポンサーもそうしている。テレビ離れが叫ばれるアメリカでも、同じような悩みを抱えつつも、ドラスティックに番組作りを変えてみたり、ソーシャルのトレンドを積極的に受け入れようとしている姿勢に感心した。

SXSW 2013 レポート: R/GAセッション “Brainstorming Technology First” [Mar. 9]

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SXSW2013 二日目、R/GAによる超人気セッション!開始40分以上前に到着したにも関わらず、キャパがいっぱいで、運営側から入場を断られてしまうも、なんとかお願いし倒して入れてもらった。このセッションはすごく面白かったので、独立したポストでこのブログでシェアしたいと思う。

Nike+ Fuel Band などを開発、いわゆるトラディショナルな広告ではなく、デジタルの最先鋒を走る旗手であるR/GA。今回のセッションのタイトルは “Brainstorming Technology First”(まず最初にテクノロジーをブレストする)となっており、広告業界なじみの「これまでのブレスト」ではなくテクノロジーを生かす為のブレストの手法論を主に紹介するようになっていた。講師はWill Turnage。Technology & Invention部門のヴァイスプレジデントだ。

そして、すばらしい事に、ここに当日のプレゼン資料があがっているので、見てもらうと良い。

プレゼン資料をかいつまみながら、解説していければと思う。

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まず最初に、R/GAの直近の仕事からの紹介だった。

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Duck Dynasty。

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Raybanのアプリ。

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Miyamo。

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プロジェクトでいつも気をつけてるのは、それぞれが “Legible + Interesting” つまり、きちんと「理解」されかつ同時に「面白い」仕事になるようにする事。

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いわゆる「既存のブレスト」のやり方は、きちんとしたブリーフを書いてから、「じゃあ、みんなで思いつくまま考えよう!」という感じが多いと思う。いっぱい考えて、考えて、いいアイデアを思いつくようにがんばる。

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普通は、「アイデア」を考えるフェーズが先行し、その後に「実行」についてできるかどうか考えるフェーズに移行する。そのときに初めて”Is this possible?”(このアイデアは実現可能か?)と言う質問をチーム内で検討する事になると思う。しかしながら、この問いの立て方には大きな間違いがある。

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なぜなら「実行可能かどうか」という問いにはエクスペリエンスとしてどうか?という問いが含まれないからだ。写真にもある通り、実行は可能だが、エクスペリエンスとしてどうなんだと思ってしまう状態は往々にしてあり得る。(ここで会場爆笑に包まれる)

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ユーザーからすると、エグセキューションからアイデアに触れることになるので、エグセキューション自体がエクスペリエンスの導入になるのだ。

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アイデアから実行までを順番に行っていくとすると、実行段階でいろいろ揉んだりしているうちに、元のアイデアに含まれていた部分が失われて、「薄く」なることがよくある。

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そして、アイデアから実行までのプロセスを線的に踏むと、そもそも時間がかかりすぎてしまう。

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では、テクノロジーをきちんと活用する為に、ブレインストーミングはどうあるべきか?

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それは、アイデアを考えながらも、同時に実行についての検討プロセスが平行して進むようになるべきである。

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その為に重要なポイント。かならず、最初の目的に立ち戻る事だ。このアイデアで本当にワークしているかどうか?

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次は、制約を積極的に受け入れる事。何かを作るということは、ある程度の制約の中で行われる事が普通だ。

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そしてもう一つが練習をたくさんする事。テクノロジーを活用する為には、普段からテクノロジーに触れている必要がある。新しいAPIを試してみる、新しいガジェットをハックしてみる、など日頃からのトレーニングが欠かせない。

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ここからは実際にR/GAで活用している”TechFirst Brainstorming”の手法論の話になる。

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ブレストの事前準備。約1~2日をTechFirst Brief執筆に費やす。その際に、施策の目的/ストラテジーに合致するテクノロジーを一つ選ぶ事。それは、具体的でなければいけない。それはOSであったり、プラットフォームであったりと曖昧な選び方にはならない。具体的な機能や特徴でなければならない。

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その後、1時間を上限に、ブレストセッションを展開。まず5~8分をかけて、事前に書いたブリーフをもとに、ブレストの参加者それぞれ、「一人」で回答してもらう。このときに、アイデアを搾り取るように、短い時間で集中して行う。場合によってはこの5分のプロセスを2〜3回繰りかえしてもよい。その後、45分程度をかけてみんなで出し合ったアイデアを共有し、場合によってはアイデアを広げるようにする。

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実際にやってみた具体例を。一つ目は「仮定」メソッド。

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新しいiPadが発売され、大人が触ったときと、子供が触ったときと、赤ちゃんが触ったとき、それぞれの違いがきちんと認識されるような機能があったとする。この機能を使ってできそうなことを10個挙げてみよう。

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ブレストの結果がこちら。白板に書かれているをいくつか拾ってみると…。
・子供用のロック。ペアレンタルコントロール機能。
・Netflixアプリ用のフィルター
・ゲームの難易度を変更させる
・年齢検出

まぁ、これだけだとわかりづらいかもしれないが、いっぱい出てくる。

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もう一つの手法論。”Fill in the blanks”「空白を埋めてみよう」という方法。

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たとえば、コレ。トラックにインスタグラムフィルターがついていたとして、どんな写真を撮ったか?というお題形式で想像力を膨らませるもの。大喜利みたいな感じ。

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いろいろ試してみると、想像力を刺激される回答が出来上がってくる。

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次の手法は、”Magnetic Poetry”と呼ばれる手法。

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見ての通り、いろいろな言葉を組み合わせる事で、アイデアを出す、という手法だ。カテゴリーは”Descriptor”(修飾語)”Technolgy”(技術)の2パターン。

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例をとって、いくつか組み合わせてみる。”fanciful”(空想に富む) + “garbage”(ゴミ) + “tumblr”=「空想的なゴミがあつまるタンブラー」というのは一体どんなものだろうか?

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“bright” + “money” + “followers”だとどうだろうか?想像力が刺激されてこないだろうか?

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さきほどの”Magnetic Poetry”のアップグレード版。

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すこし項目が追加されている。 “Tone”(トーン) “Occasion”(状況)”Functionality”(機能)

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何かのアイデアにつながりそうな組み合わせをどんどんピックアップしていく。

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今度は、言葉の組み合わせではなく、APIの組み合わせでアイデアを作る手法。

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たとえば、”foursquare API” + “instagram API”という組み合わせで考えてみると…。

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それっぽいプロダクトの一丁出来上がり!アイデアを考える為の素地に十分なる。

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この手法をR/GAで実際に活用してでわかった事。

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それはブレストによって生まれるアイデアがより面白く、かつ実現可能なものがたくさん生まれたと言う事だ。

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さらには、時間を短縮した。

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そして、クリエーティブ作業をクリエーティブスタッフだけでなく、それ以外のスタッフにとってもアクセスしやすいものにする事ができた。

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ただ、この手法はかならずしも万能ではない。この手法を活用しても「あんまり俺には向かなかったみたい」と言う人もいる。従来通りのブレストに固執する人もいるかもしれない。そういう人たちに対して無理にこの方法論を強いる必要はない。

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この手法はツールの一つでしかなく、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、強力なツールである事は間違いない。

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ここからはちょっとしたTIPS。

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ブレストの前段階になるTechFirstブリーフは書き上げるのに時間がかかる。ブリーフの執筆には十分な時間を割く事。

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「このアイデアは実現可能か?」と問いをたてるのではなく、「このアイデアは良いUXで実現可能か?」という問いで繰り返しアイデアを自問自答する事が大切だ。

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そして、このブレストの際には、クリエーティブスタッフだけでなく、それ以外のスタッフにも入ってもらう事が重要だ。

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SXSW 2013 レポート [Mar. 8]

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会社から機会ををもらって、SXSW 2013(サウス・バイ・サウスウェスト)に参加してきた。日本でのレビュー記事はまだ多くはないと思うので、いくつかのエントリーに分けて、その様子をレポートしたいと思う。

SXSWとは…(ここから抜粋
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【概要】
毎年3月頃にアメリカのテキサス州オースティンで行なわれている、音楽・映画・インタラクティブ部門を中心とした大規模なアートイベントおよびカンファレンス。SXSW社が運営。アルフレッド・ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」(North by Northwest)をもじって名付けられた。 twitterなどのサービスが一気に広まったイベントとして有名。

【目的】
「クリエイティブな人や企業がキャリアの発展とアイデアの共有を目的とした世界交流が出来るイベントを作ること」

【主な区分け】
SXSW Music SXSW Film SXSW Interactive
※また、教育目的としたSXSWeduや環境問題に対応するSXSW Ecoも存在する。

【歴史】
Roland Swensonが中心となり、Chronicle社のLouis BlackとNick Barbaroと共に1987年3月に音楽イベントとして開催される。 1994年から音楽と映画、インタラクティブ部門に枝分かれし、2011年にはSXSWedu、2012年にSXSW Ecoが設立された。 2001年には音楽部門でWhite StripesやThe Strokesなどのバンドが一躍有名になった。

【日本での認知】
2011年にはインタラクティブ部門でセカイカメラで有名な頓智.の井口尊仁が講演、2010年にwater fai、2012年は音楽部門でLagitagidaやElectric Eel Shockなどの日本出身バンドが出演し、日本のインタラクティブ、音楽業界での認知度も高まっている。日本の広告会社もだんだんと人を送り込むようになってきているようだ。
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まず、参加する前から感心したのは、いかにデジタル面ですごくよく準備されてるかということ。参加のため、レジストレーションを済ますと専用サイトでプロフィールの登録ができるようになる。よくよくみると、軽いソーシャル機能がもあり、他の参加者のプロフィールが見れたり、メッセージをやり取りできたりする。(知らない人からメッセージが届いたりもする)専用スケジューラーもあり、参加登録したイベントを自分のグーグルカレンダーに反映させるできるような機能もある。そして、驚いた事に専用のiPhone/iPad/Androidアプリがあり、ここから、すべての情報が見れる。とくに会場では5000以上のイベントが行われるので、はっきりいってこのアプリがないとどうにもならないぐらいだ。会場ではみんなこれを使ってた。ガジェット類の電源が続く限りはこのアプリでほぼ事足りる。

というわけで、オースティンで行われるSXSWに胸を踊らせてやってきましたテキサス州!宿泊先はホテルといいつつ、ほぼモーテル。厳つい男たちが夜な夜なビールを持寄って集まってどんちゃん騒ぎをしている。最初の晩は、女性の叫び声が聞こえた。若干怖い。飯はしょぼい。だが、そんな事よりも、ここに来れただけで御の字だ。

【3/8(金)初日】
SXSWの始まり。参加者はまず始めに参加証である「バッジ」をピックアップしに行かないと行けない。というわけで、朝、早起きして早々にバッジのピックアップに行こうにも、シャトルが全くこなかった…。これで、大幅に時間をロス…どうやら、シャトルが満員らしく、自分のホテルをスルーして会場に向かっているらしい。$60払ったのにあんまりだ。そして、当然の事ながら、待っているの自分だけではなく、他にも待っている人がおり、せっかくなので話しかけてみると、シャトルバスがまったくこない愚痴をネタにさっそく何人かと仲良くなった。

オクラホマでウェブデベロッパーとして活動するダニエル。
メキシコで組織全体の生産性を向上させる為のプラットフォームを開発しているアレックス。
サンフランシスコでインタラクティブプロデューサーをしているベン。
オーストラリアでフィルム/メディアのPhD学生キャメロン。

インターナショナルな雰囲気がわくわく感をそそる。

ダニエルは時間的に早かったので先に出発してしまっていたが、いつまでもこないシャトルバスを待つ訳にも行かないので、仲良くなった3人とともに、アレックスのレンタカーでカープールし、会場近くに到着、その後徒歩で会場入り、バッジを獲得。

人の多さに圧倒される。バッジを発行してもらうや否や、一目散に目的の会場に向かう人。メイン会場であるオースティンコンベンションセンター内の通路にある電源ポートに群がり、一心不乱にモバイルのキーボードを叩く人。独特の熱気がそこにはあった。

だが、のんびりしている暇はない。せっかく来ているので、自分も動こう。
先ほどのSXSWアプリを通じて、いくつか目星を付けておいたイベントに参加する事にした。初日に自分が参加できたのは以下のイベント。

<Digital Creative Job Market (デジタルクリエーティブの為の就職フェア)>

いきなり職探しってどういう事だよ?と言われてしまうかもしれないが、就職というか、海外の企業ってどんな人を求めているのか、どういう採用をしているのかが知りたくて立ち寄ってみた。

時間が早かったのか、あんまり人はいなく、ちょっともの寂しい雰囲気。ブースを出している企業もそんなに多くなかった。20企業ぐらい?そんななか、クリエーティブブティックのCP+Bがあったので、早速話を聞いてみることにした。

だが、CP+Bのブースはちょっとなんだか様子が違った。ポーディアムの上にはアンティーク調のフレームでデコレートされたiPad。そして横には”Please do touch the art”(我々の芸術品にぜひお手を触れてください)と。CP+Bが直近で制作したアプリをケーススタディーとしてみせつつ、どのような人材を求めているか詳細に説明してくれた。

興味深かったのは、「履歴書の提出」が存在しない事だ。リクルーターから名刺を渡され、「リンクドインのプロフィール送って!」で以上終了。職歴やプロフィールに興味を持ってもらえれば、その次のステップにすすめる、というわけだ。日本の就職活動のような堅苦しさは一切ない。

<2013 SXSW Newbies Meet Up(SXSW 2013初心者の館)>

SXSWに参加するのは初めてなので、オリエンテーション的な意味もかねて参加してみる事にした。
このセッションのモデレーターは、John Muehlbauerというフランクな語り口が魅力的なおじさん(おにいさん)。

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右端に写っているひとが、ジョンさん。テーブルには全米はもとより、世界各地から来た人たちが集う。

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テーブルでは、名刺代わりにtwitterアカウントを書いた紙を交換。

部屋に入ると、結婚式場のような具合で円卓がいくつかあり、好きなところに座ってもらい、そこで相席になるメンバーと仲良くなるというわけだ。自分が座ったテーブルには、オースティンの企業に勤めるモバイル関連企業でデザイナーをやっている2人組、シンガポールで同じくモバイル関連の仕事をする人、タイからのデベロッパー、インディアナの学生、ニューヨークでコーディングを教える先生、が来ていた。twitterアカウントを交換すると、すぐにいろいろ話が始まる。モバイル畑の人が多いテーブルだったので、「モバイルってどうよ?」という話になるのだが、印象的だったのは「モバイルよりもこれからはウェラブル(wearable)だ」と言ってる人が何人かいた事だった。

<Data & Gamification: Value to the Enterprise(ビッグデータとゲーミフィケーション:企業にもたらすその価値は)>
Brendan Wallace, Jeremiah Owyang, Michelle Accardiによるパネルトーク。
このセミナーは若干はずれ、だったような気がする。話がすごくふわっとしていた…。

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セッションの様子。

一言で言うと、「ビッグデータとゲーミフィケーションを両方活用すると、すごくいいよ!」という話。
セッション中の発言で気になったものをピックアップすると…
・なんでもとりあえずゲーミフィケーションすればいい!という訳ではもちろんなく、きちんとゲームフィケーションの正しい要素を文脈に入れる事が大事。
・良いゲーミフィケーションは、逆説的に聞こえるかもしれないが、人生や実生活の要素をうまく取り入れる事が重要。
・ゲーミフィケーションはつまるところ、「モチベーションのデザイン」。決して特殊なカテゴリーのマーケティングではなく、もっと日常的に行使されるべきものだ。
・サムソンは自社のカタログサイトにゲーミフィケーションのシステムを導入した。「自分の好きなブランドに認知される」と言う事をモチベーションに、アクセスした人がぞくぞくとレビューや評価をサムソンのカタログサイトに寄せるようになった事例がある。
・ゲーミフィケーションは参加者を「操作」するためのものではない、「表彰」することである。
・ビッグデータとは、集約した情報に「インテリジェンス」というレイヤーを加える事である。

また適宜加筆したり、追加投稿したりします!

英語の勉強をしたい人はapple tvを買うべき

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最近、Apple TVを購入したが、これがすばらしい。

購入後、しばらく使って見て、これは英語を勉強しようと思っている人にとっては、素晴らしいツールなんじゃないかと思うになった。その理由のいくつか記したいと思う。

【時事ニュースを聴く】
Apple TV には、youtubeやiTunes storeの他にデフォルトでwall street journalの動画素材が見れるようになっている。

これが、大変素晴らしいと思う。経済、政治、ファッション、ゴシップなど、情報は幅広いし、日本の報道についてもちゃんとされている。

置かれているコンテンツの質もそうだが、それぞれの動画コンテンツが数分というコンパクトな単位でまとめられているのも良い。リスニングの練習に何回でも再生できるし、数分の短さであれば、別に気合いいれて袖まくりするような事もなく気軽に始められる。

【TEDを聞き倒す】
Apple tvにはポッドキャストを聴くための機能があるので、例えばTED Talksをひたすら聞くという事ができる。このTED Talksもものによっては数分の長さになっているので、とっつきやすい。また、扱っているテーマも幅広いので、何かしら興味惹かれるトピックがあるはずだ。

【テレビ、というものに対する視聴態度】
これまで、wsjやポッドキャストなど、ネットで勉強というと、椅子に座り小さなスクリーンに向かって勉強、というこれまでの勉強態度の延長線上にあるような勉強の仕方だったような気がする。

しかし、apple tvとテレビをつなぎ、その勉強の場所をリビングに移す事で、より気軽に勉強できるようになった気がする。

いうまでもなく、語学の習得に大事なのは、継続性だ。机に向かうのが苦痛になるなら、ソファに座れば良いと思う。

そんなわけで、apple tvは個人的にはおすすめだ。Apple製品好きで、家に大きなテレビとワイヤレスネットが飛んでいる人は、使ってみても人生に損は無いと思う。

UCLA D|MAの友人たちとの再会

UCLA D|MA卒業生の、Michael Changとコンタクトをとり、ご飯を食べる事になった。Michaelの計らいで、同じくD|MA卒業生で、現在Googleビジュアライゼーションチームにいる、Jono Brandelとも一緒にご飯を食べる事になった。

ちなみに、MichaelもJonoもすごいやつだ。彼らのポートフォリオサイトとか、直近プロジェクトの紹介する。
詳しくは以下のリンクをみてもらえればわかると思う。

Jonoのポートフォリオサイト
Michaelの学生の頃のポートフォリオ
Michaelの最近のポートフォリオ
(最近は、個人プロジェクトとして、kickstarterでお金を集めたりして、数人でゲームを作って発売しようしているらしい)

常に作り続ける二人は、素直に尊敬する。

そして、久しぶりの会食は本当にうれしかった。インド料理屋と、バーに行った。SF滞在最終日に、GoogleビジュライゼーションチームのあるSF支社を訪問した。Jonoがアテンドしてくれ、短い間だったが、オフィス内を見学させてくれた。Aaron Koblinにも会えて、本当に懐かしかった。

同じ学校で、日々切磋琢磨した仲間たちが、世界中でデザインの領域で活躍しているのをみるのは心が躍る。そして、自分はどうだろうか?とも思う。様々な方面でがんばっている仲間たちに、「俺はこんな事を東京でやってるぞ!どうだ!」と言えるだろうか?今から10年後、みんなは、そして自分は何をやっているのだろうか?きっと、日々の仕事に集中する事で、自分を前に進めてくれるのだと思う。

みんな、東京に来る事があれば、みんなにしてもらった親切を思い出し、ぜひ東京や、自分が働いているオフィスを紹介したい。

スタンフォード大学 d. school訪問

SF滞在の初日、SFOに降り立ってすぐ、その足でパロアルトにあるスタンフォード大学に向かった。前々から気になっている、d.schoolが毎週金曜日に無料でd.school内ツアーを行っており、それに参加するためだ。結局、SF到着が遅れてしまったため、ツアー自体は後半部分しか参加できなかったが、それでも十分に参考になった。

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校内は、個々人が作業する為のスペースと、授業を行う教室があったが、その垣根は緩く、印象としてはまるで一続きの空間のように思えた。そこら中にポストイットがはってあり、白板にはアイデアやブレストの殴り書きが走っている。生徒は自分のスペースでパソコンに向かいながら、何かを作っていたり、みんなで打ち合わせをしていたりした。すべてが「筒抜け」(良い意味で)となっており、d.schoolが醸成している独特の活気が感じられる。

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d.school自体は、学位を授与する教育機関ではなく、クラスをオファーするだけの場所。逆に言うと、スタンフォード大学内の生徒で、先攻によらず自由に参加できる。校内に、生徒のリストとどの先攻かが書いてあったのでみてみると、いろいろなバックグランドを持った人がいるという印象を受けた。スタンフォード大学の中に、プロダクトデザイン先攻があるのだが、プロダクトデザイン先攻の人はむしろ、少数派のグループのように思えた。ツアーを開催してくれていたのが、現役のd.schoolの生徒だったが、そのうちの一人に詳しく話を聞いたところ、彼女も本職は化学の先攻で、たくさんの人がきれいな水にアクセスできるように考えることが彼女のメインの関心ごとらくしく、彼女のプロジェクトはすべてそのテーマに沿ったものとなっていた。

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d.schoolで行っている事はとてもシンプルに思えた。社会の中に存在する解決されるべき「課題」を発見し、その課題に対する「ソリューション」を探す、と言う事。広告会社や、自分の会社でやっている事とそんなに変わりはないのでは?というのが率直の感想。違うとすると、そのアプローチが大きく違う、と言う事。広告会社が主にコミュニケーションという領域という領域だとすると、d.schoolはプロダクトという観点だろう。ただ、d.schoolでは「モノ」を作るだけじゃない。「サービス」などのものでもd.schoolのアプローチは有効であり得る、と思う。

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また、人の雰囲気がネアカ。ツアー担当じゃない学生が、ツアーされているグループに出くわし、ツアーガイドに促され、その場で、簡単に自分のプロジェクトの説明を始めるなど、かなりフランクな雰囲気。ツアーガイドも明るく話す。よって、プレゼンがうまく見える。(というか、かなり環境が楽しいんだろうな、というのが伝わってくる)

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そして、企業とのコラボレーションする形の授業がかなり多いみたいだ。多くの世界的企業のチームと協業し、授業の中でプロジェクトを行う、というのも頻繁に行われるみたいだ。学期の最後には、CEOに直接プレゼンし、それが事業化したもの数多くあるらしい。

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仕事で普段やっている事と、よく似ているが、とはいえ全く同じではなく、ちょっと違う。こういう環境に身を置けば、少し物事が違って見えてくるのかもしれない。勉強してみたいと思う。